小説

□見つめる先には
1ページ/1ページ



「…そーたん、これはどういうことかな?」

「見ての通り、夏目さんを抱き締めています。」

「それはわかるんだけど…。」

えーっと…どうしてこうなったんだっけ?







〜見つめる先には〜







確かそーたんが部屋に来て。

特に何も無かったから手元にあった簡単なゲームをしたりして。

またもうすぐ渡狸やちよたんの学校終わるよねって話になって。

僕私服だから着替えるよってなって。

着替えに行こうとしたら後ろからそーたんに抱き締められて。

近くにあったベッドにそのままダイブしちゃって。

あ、何もされてないよ。

一緒に倒れ込んだだけ。

変な想像をした人にはお仕置きだよっ☆

…とか言ってる場合じゃなかった…。

「そーたーん、早く着替えないと迎えに間に合わないよー?」

「大丈夫ですよ、まだもう少しなら時間はあります。もう少しこのままで居させてください。」

そう言って更にぎゅっとされる。

顔が火照ってるのがわかる。

胸がドキドキいってる。

時計の音がカチコチうるさい。

「…そーたーん、ちよたん待ってるよー?」

ぴくっと反応するそーたん。

少しそのままだったけど、名残惜しそうな感じにそーたんが離れた。

ボクはゆっくりと立ち上がる。

「じゃあちょっと着替えてくるね〜。」

そうそーたんに言って着替えに行く。

はずだったのに、今度は腕を掴まれた。

「そーたん…?どーしたの?何かあったの?」

少し心配になってそーたんを覗き込んでみる。

顔が伏せられててよく見えない。

「…残夏…。」

「え……んっ…!」

急に名前を呼ばれて対応仕切れないでいたら、不意打ちでキスされた。

長くはなく、すぐに離れる。

そして今度は前から抱き締められた。

何をしているんだボクは。

これじゃ振り出しじゃないか。

「凜々蝶様は特別で大事な方です。でも今僕が見ているのは、あなたです。」

ばちっと目を合わさせられる。

そーたんの色の違う瞳が綺麗だった。

「…ありがと、そー…し…。」

あだ名で呼びかけたところを修正して名前で呼んでみた。

そーたんはにっこりと笑う。

「…そろそろ着替えてこなきゃ遅れちゃうね☆」

ぺっとそーたんをひっぺがして今度こそ着替えに行く。

時間のことは事実だったし、そーたんもそれ以上引き留めなかった。

いつもの笑顔はしっかり作れていただろうか。

自分で言っといてあれだけど、名前を呼ぶのは恥ずかしかった。

抱き締められてる時より、キスの時よりもドキドキがうるさい。

これから皆を迎えに行くまでの時間、二人きりでボクの心臓はもってくれるのだろうか。







END

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ