小説
□見つめる先には
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「…そーたん、これはどういうことかな?」
「見ての通り、夏目さんを抱き締めています。」
「それはわかるんだけど…。」
えーっと…どうしてこうなったんだっけ?
〜見つめる先には〜
確かそーたんが部屋に来て。
特に何も無かったから手元にあった簡単なゲームをしたりして。
またもうすぐ渡狸やちよたんの学校終わるよねって話になって。
僕私服だから着替えるよってなって。
着替えに行こうとしたら後ろからそーたんに抱き締められて。
近くにあったベッドにそのままダイブしちゃって。
あ、何もされてないよ。
一緒に倒れ込んだだけ。
変な想像をした人にはお仕置きだよっ☆
…とか言ってる場合じゃなかった…。
「そーたーん、早く着替えないと迎えに間に合わないよー?」
「大丈夫ですよ、まだもう少しなら時間はあります。もう少しこのままで居させてください。」
そう言って更にぎゅっとされる。
顔が火照ってるのがわかる。
胸がドキドキいってる。
時計の音がカチコチうるさい。
「…そーたーん、ちよたん待ってるよー?」
ぴくっと反応するそーたん。
少しそのままだったけど、名残惜しそうな感じにそーたんが離れた。
ボクはゆっくりと立ち上がる。
「じゃあちょっと着替えてくるね〜。」
そうそーたんに言って着替えに行く。
はずだったのに、今度は腕を掴まれた。
「そーたん…?どーしたの?何かあったの?」
少し心配になってそーたんを覗き込んでみる。
顔が伏せられててよく見えない。
「…残夏…。」
「え……んっ…!」
急に名前を呼ばれて対応仕切れないでいたら、不意打ちでキスされた。
長くはなく、すぐに離れる。
そして今度は前から抱き締められた。
何をしているんだボクは。
これじゃ振り出しじゃないか。
「凜々蝶様は特別で大事な方です。でも今僕が見ているのは、あなたです。」
ばちっと目を合わさせられる。
そーたんの色の違う瞳が綺麗だった。
「…ありがと、そー…し…。」
あだ名で呼びかけたところを修正して名前で呼んでみた。
そーたんはにっこりと笑う。
「…そろそろ着替えてこなきゃ遅れちゃうね☆」
ぺっとそーたんをひっぺがして今度こそ着替えに行く。
時間のことは事実だったし、そーたんもそれ以上引き留めなかった。
いつもの笑顔はしっかり作れていただろうか。
自分で言っといてあれだけど、名前を呼ぶのは恥ずかしかった。
抱き締められてる時より、キスの時よりもドキドキがうるさい。
これから皆を迎えに行くまでの時間、二人きりでボクの心臓はもってくれるのだろうか。
END