うたプリ

□H27 1/5 Birthday
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楽屋の端
こそこそと中々背の高い(一人覗く)男性四人が額を突き合わせて何かを話していた
元旦がすぎ、仕事が落ち着いた昼下がり
彼らの話題は5日の話題で持ち切りなのだ
1月5日。それは彼ら、QUARTET★NIGHTの専属作曲家、黒舞灯の誕生日である
因みに今日は前日だ

「で、マイマイの誕生日…どうすんの」

「正直、前日…しかもまだ仕事が残ってる状態でプレゼントを物色しに行ける時間はあまりないよ」

「ったく…なんでもっと早く気づかなかった」

そう口々に零す通り、彼らは彼女のプレゼントを用意していなかった
年末年始は勿論仕事。その後の日も仕事仕事仕事…エトセトラ
仕事の合間を縫って買いに行く…という所業は出来ていなかったのだ
しかし、この中で余裕な笑みを浮かべる者が一人

「ふん。これだから愚民は」

「そーいうカミュはどうなの?」

「無論。準備は整っている。明日の為に仕事を速球に終わらせたのだからな」

その言葉に三人が恨めしそうにカミュを見つめた
確かに彼は、一人で早々に終わらせられる仕事は元旦最初に回していた
おかげで彼の仕事は今日の音楽番組でソロ曲を歌うことぐらいなのだ

「マイマイも相当ミューちゃんのこと溺愛してるけど、ミューちゃんも負けてないよねぇ」

「ちっ…」

「ふっ。せいぜい当日まであがく事だな」

話は終わりだという様にカミュは楽屋を出て行った
余談だが、先ほどまで四人でバラエティ番組に出演していたのだ
カミュが出て行った後の残された三人は、また膝を抱えて悩みだした

「というか僕達、あまり灯のこと知らないよね。もう一年経つのに」

「まだまだ謎多き人。だね…えぇいっ!!こうなったら今から実家に帰って寿弁当スペシャルバージョン作ってくる!!」

言うが早いか、嶺二は楽屋を飛び出した
猪突猛進、天真爛漫、思い立ったが吉日…とはこういうことを言うのだろうか
残された二人も、嶺二に感化されて「時間の合間合間にどうにかするか」という結論に至ったのだった



そして当日
運よく、五人で集まる時間が作れた
いつもの会議室に灯を呼び、ささやかながらの誕生日パーティをすることにした

『悪い。遅く…「「誕生日おめでとう!!」」え…』

ドアが開き、灯が急いで入って来たと同時にクラッカー音が盛大になる
突然の事に彼女はその片方しか見えていない目をぱちくりとさせた
普段の彼女があまり出すことは無い、素の表情である

「大成功、だねん」

「誕生日おめでとう灯」

「おめでと」

「おめでとう」

口々に祝いの言葉が掛けられる
ぽかんとしていた彼女はその言葉たちでようやく我に返り、状況を判断したのか嬉しそうに笑ってありがとうと礼を述べた
四人はその笑顔を見て、満足そうに微笑むとそれぞれプレゼントを渡していった

「僕からは寿弁当特製スペシャルバージョンだよ。昨日急いで作ったからちょっと形は歪かもだけど、味はもちろん保障するよ」

『でか…』

「それともう一つ」

嶺二は灯に近寄り、耳元で囁いた

「来年は二人で、大人な時間を過ごしたいな」

『え』

「じょーだんじょーだんっ!本命はこっちのブレスレットだよ。ぼくらカルナイをイメージして徹夜で作ったんだよん」

そう言って優しく、いつの間にやら付けたブレスレットを撫でる
暫らくそうしていると後ろから早く次と藍に捲し立てられ、早々に持ち場に戻った

「俺からはこれだ。俺のお古だが…手入れはちゃんとしてある」

『!!俺がギター弾いてみたいって言ったの覚えてたのか…!?』

「扱えるようになったら、合わせてみるか」

『〜〜っ…ありがとう蘭丸っ!!』

大切そうにぎゅっとギターの入ったケースを抱きしめ、肩にかけてから蘭丸に抱き着く
どさくさに紛れて、蘭丸は抱きしめ返していた

「来年こそはちゃんと祝わせろよ。勿論、仕事仲間としてじゃねえぞ?」

そうささやいて蘭丸は離れる
対する灯は少しぽけっとしていた

「僕はこれ」

続けざまに藍
藍は灯の横髪を耳にかけて、その耳たぶに開いた穴に優しくピアスを差し込む
藍が渡したものはダイヤ型のピンク色をしたビーズのピアス

「邪魔にならない様に短めで小さめのを選んだから」

『あ、ありがと「あ、あと」!?』

藍は灯の唇に人差し指を当て、呟いた

「そのピアスを僕だと思って、ずっと身に付けててね」

にこり
天使のような微笑みと言われている笑顔でそう言う
が、今の彼の笑みは小悪魔だ

「最後は俺だな。灯、少し動くなよ」

カミュはそう言って、スッと優雅な動作でしゃがみこみ何かを彼女の腰に巻いた
カチャリと金属が触れ合う音がした
それは灯にとってなじみのある音

『レイピア…?』

「節目の20の歳の時は豪勢なものがあげられなかっうたからな。今年こそはと思ったのだ」

『……』

「気に入らんか?」

『いいえ。嬉しすぎてなんていえばいいか分からなかっただけです』

にこりと微笑む灯
なんだかんだ美味しい所を持って行ったのはカミュのようだ

「帰ってからも祝いのものは用意してあるから楽しみにしておくといい」

『ありがとうございます。伯爵様』


こうして四人がプレゼントを渡し終えた
灯の両手と胸には大切な物がいっぱいになっていた

「改めて」

「「誕生日おめでとう、灯」」

『ありがとう、ございます』

泣きながら微笑む姿は、今までの中で一番美しい笑顔だった




END



来年は誰と一緒に過ごすかは、秘密である

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