うたプリ

□良い夫婦の日に
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テレビから聞こえるのは、どこかのニュース番組
そこにはQUARTET☆NIGHTの姿があった
今度リリースされる新曲、"マリアージュ"の紹介だった

《では最後に、今日は11月22日良い夫婦の日です。マリアージュも結婚を意味する言葉ですが、皆さんは結婚について願望などありますか?》

《結婚かぁー…マジな話しちゃうと僕もそろそろ節目だし、所帯持ちたいよねぇ。すぐよぼよぼのおじいちゃんになって一人でぽっくり。なーんてねっ》

嶺二は、あははっと笑って語尾に星マークが付きそうな位のはじけ具合で言った

《でも結婚するなら料理の上手い子だよねっ☆ふりふりのエプロン着てさっ♪テレビの前のガール達、僕においしい手料理作ってみる気ない?》

カメラに向かってかっこよくウインクを決める
きっと嶺二のファンは黄色い声を上げて、騒いでいる事だろう

《では、黒崎さんは?》

アナウンサーの女性は嶺二と笑いあってから、蘭丸に質問を投げかける

《あ?正直そういうことには関心が向かねえが、そうだな…音楽を分かり合える奴か?それと、金にがめつくない奴な》

それはなんとも現実的な…
まぁ、蘭丸自体、節約家だからしかたねえのか

《ランランってば現実的−っ!じゃあじゃあアイアイは?》

嶺二は蘭丸の肩に手を置いたまま、藍に話を振る

《僕?僕はまだまだ結婚できるような歳ではないから、他の皆より現実味がないけど…そうだな…出来るなら包容力があるような女性が良いかな》

藍はカメラに向かって、はにかむ
コイツはホントにカメラの前だけ、可愛い15歳だな
蘭丸も顔には出さないが、瞳がそう言ってるように見える

《では最後にカミュさんはどう思いですか?》

《私はお嬢様達に使える身なので…ですが、出来るなら落ち着いた女性…と、これでは結婚の願望ではなく女性のタイプですね》

こちらもまた営業スマイル
彼の本当の姿を見たら、ファンの人達はどんな反応をするだろうか…

《QUARTET☆NIGHTの皆さん、ありがとうございました。続いては――――…》

『あ、やべ、もうこんな時間』

時計を見れば、そろそろ出る時間
仕度を整えて玄関に向かう
後ろからお迎えをするようにカミュの愛犬、アレキサンダーが付いて来た

『じゃあ、行ってくるねアレキサンダー』

「わふっ」

頭を一撫でして、家を出る
向かう先はもちろん事務所
四人は先ほどの放送を終えて、会議室で待機してくれているはずだ
あぁ、その前にお茶請けを買わねば





会議室

「はぁーっ…お腹すいたぁー…ランラーン、なんか持ってない?」

「んなもん持ってねぇ。つか、腹減ってるのは俺もだっつの」

彼ら四人は灯がくるまでの間、だらだらと過ごしていた
そんな中、嶺二がふと何か思い当たったのか、だらっとしていた体を元に戻した

「で、皆は誰を思い浮かべたのかな」

「あ?」「む?」「何が」

自分の問いに、テレビでは見せない普段の返答をする三人に苦笑する

「だから、結婚の話を振られた時。みーんな頬がゆるっゆるだったから一体誰を思い浮かべてたのかな、と」

「それはレイジもでしょ」

「あらら、痛い所突かれちゃった」

「つーか、料理上手い奴なんてありきたりな事良くもまぁいけしゃあしゃあと言ったな」

「えぇー?だって手料理って嬉しいじゃない。それで、可愛いエプロン付けて"お帰りなさい嶺二さん"って言われたいなぁ…灯ちゃんに」

嶺二の口から灯という名前が出た瞬間、ピクリと三人が反応する

「それは聞き捨てならねぇな、嶺二」

「なんでそこで彼女が出て来るの」

「……………」

「やぁーっぱり、皆灯ちゃんのこと考えてたんだね」

嶺二はニヤニヤと笑って言う
ここまで言ってしまっては、流石に誤魔化すことは出来ない

「確かに、マイマイはお金にかんしてがめつくないし、節約術も身に付けてるし、滲み出る母性があるし、ミューちゃんの前だと凄く礼儀正しいしねぇ」

「「「っ…」」」

完全に図星を突かれた三人はぐうの音も出なかった
あの時確かに頭をよぎったのは間違いなく彼女だったのだから
嶺二は、どこから出したのか携帯用の栄養菓子を頬張りながら、考える







「たっだいまーっ!」

『お帰り嶺二、今日もお疲れ様』

家に帰り、元気よくドアを開けると愛しい妻が素敵な笑顔で迎えてくれる
これがいつもの至福の時間

「いやぁー…今日は社長の無茶ぶりでバンジージャンプ10連発とか、僕もうそんなに若くないのにさぁ…」

『ふふっ…テレビでは永遠の17歳って言ってるのに』

「テレビの前では皆に喜んでもらいたいから無茶するけど、家では別なの!!」

ぎゅうっと抱きしめると、突然の事で慌てたのか身をよじる
逃がさないという様に力強く抱きしめると、大人しく僕の腕の中に納まってくれる
あぁ、かわいいなぁ…

『本当に疲れた時は頼ってね?いつでも甘えさせてあげられる準備は出来てるのよ?』

「おやおや、これはなんとも頼もしい事で…僕は良いお嫁さんを持ったね」

ニコリと笑って伝えると、灯ちゃんの頬が赤く染まる
照れ隠しの様に、僕の胸に頭をくっつける
結婚してからだいぶ経つというのに、こういう所は変わらない

『っご、ご飯出来てるから早く食べよう?それかお風呂先入る?』

灯ちゃんは意図して言っていないんだろうけど、その言葉は定番の言葉なわけで
自然と頬が緩む

「じゃあ、灯ちゃん」

『っはぁ…!?そんなの選択肢にないじゃっ…!』

反発する彼女の口を指で塞ぐ

「ご飯にする?お風呂にする?それとも―――…は定番でしょ?」

『なっ……ちょっ、嶺二っ』

彼女の静止を聞かずに、抱き上げて寝室に向かう
まだ何かを言っている口を塞いで

『んっ…!』

「甘えさせてくれるんでしょ?」

『そうだけどっ…』

「じゃあたぁーっぷり甘えさせて貰おうかな。勿論オトナな方法で…♪」








「「ちょっとまてぇぇっ!!」」

「ゴフッ」

嶺二の鳩尾に蘭丸と藍の蹴りがクリーンヒットした
先ほどまでの甘ったるい話は、全て嶺二の妄想である

れいじ は ちからつきた

「まったく…一人で変な妄想に浸らないでよね。確かに灯は可愛いけど」

「灯が可愛いのは認めるが、てめぇの口からクソみてぇな妄想聞くのはお断りだっつの」

「ふんっ…愚民が」

そういいながら、蘭丸もふと考えてしまう
彼女との結婚生活と言うものを…






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