うたプリ

□愛のReincarnation
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燃えている

なにが?

森が、人が

どうして?

それは"戦争"だから


「"  "!!"  "!!死んじゃいやだっ…!!」

「ライ…ごめんね…ぐっ…」

「"  "!!!いやっ、いやぁっ!!!」


むせ返るような血の匂い
気持ち悪い。目の前にいる"  "の腹部から止めどなく血が溢れて、血が止まる気配がない
それと同時に"  "の目の光が少しずつ消えてゆく









『っ!!!!』


そこで俺は飛び起きた
朝から気分の悪い物を見てしまった…
未だにあの時の"  "の血の感触が忘れられない
目を閉じればあの時の光景が目に浮かぶ
俺は無意識にいつも眼帯をしている右目に触れる
今はしてはいないけれど、それは自室でのみ
決して、他者には見せる事の出来ないもの
先ほどの悪夢を思い出し、身震いをする



『どれだけ執着してるんだよ』


俺は嘲笑して、ベッドから降りる
着ていた部屋着を脱ぎ、クローゼットの中のドレス…ではなく、男装用の服を手に取る
といっても男装してる気はないのだが、どうにも他人からはそう見えているようなのだ
いつものように首にチョーカーを付け、その上からストールを巻く
そして自身の右目に眼帯を当てる


『行ってきます…』


そして俺は部屋を出た
少しの、寂しさを残して




部屋を出ると蘭丸に出くわした
相変わらず不機嫌……いや、ST☆RISHが来てから不機嫌が増したか
蘭丸は俺に気付くと、近くに寄ってきた


『おはよーさん。早いな』

黒崎「今日は仕事が入ってるんでな。おめえこそ早いじゃねえか」

『ちょっと寝れなくてな…最近寝付けないんだよ』

これは嘘
寝れないのはいつもだ。熟睡出来た事なんて一度もない

黒崎「……………大丈夫なのかよ」


蘭丸の珍しい言葉に、俺はピタッと足を止めた
見上げると、らしくない事を言った自覚はあるのか、照れくさそうにそっぽを向いていた
俺は笑って、背中を思いっきり叩いた


黒崎「ぃっ!!てぇ…なぁ、おい…!!」

『らしくねえ事言うんじゃねえよ気持ち悪い。お前はいつものようにぶっきらぼうでいいんだよ』

黒崎「だからって叩くこたぁねえだろーが…たっく…」


ガシガシと蘭丸は頭を掻いて、呆れたように俺を見た
その表情はいつもの蘭丸で、クスッと笑って、再び歩き出した
なんだかんだで俺は蘭丸に救われてるのかもしれない。こっちに上京した時、初めてできた友達と言える人物が蘭丸なのだ
それから、いろいろと助けてもらっていた
歳が近かったのもあるのかもしれないが


『蘭丸』

黒崎「あぁ?」

『ありがとう』

黒崎「はぁ?んだよ、いきなり」

『なんとなくだよ。なんとなく』


蘭丸は頭に疑問符を浮かべていた
これは俺だけが知ってればいい

黒崎「………んな、顔すんなよな…」

『?何か言ったか?』

黒崎「何も言ってねえよ馬鹿」

『なっ!!?馬鹿とはなんだよ!!』

その後俺らは他愛のない話をして、別れたのだった
その頃にはもう、夢の事はすっかり忘れていた






『春歌……春歌…!!』

七海「はっ、はいっ…!?」

『お前な…話聞いてたか?』

七海「あ、はい…」

『俺何も話してないぞ』

七海「えぇっ…!?」


あまりにもぼーっとしていたので、カマをかけたら案の定引っかかった
俺はため息を吐いて、顔を寄せる
すると春歌はボッと顔を赤らめた


七海「あ、あぁぁぁぁあのっ…!!?///」

『そこまで赤くなられると、こっちまで恥ずかしいんだが…』

七海「あ、ごめんなさいっ…!!」

『いーよ、謝らなくて…それより考え事か?俺で良かったら話聞くぞ?』

七海「い、いいえっ!!大丈夫ですっ…!!」

『そうか…』


最近分かった事
春歌の大丈夫は大丈夫じゃない事
この前も曲作りの没頭して夜遅くまで起きていたらしく、寝不足のようだった
どれだけ音楽馬鹿なんだと思ったが、人の事言えないので黙っておく
それから、春歌に色々教えているうちに時間になった
春歌は社長に呼ばれて、この後社長室に行く事になっていた


七海「あ…もう時間ですね…ありがとうございます。色々教えてくれて」

『いいえ。また聞きたい事あったら遠慮なく言えよ?』

七海「はいっ!では、お先に」

『あぁ』


春歌はそう言って部屋を出ていった
後は俺だけが残った
今はST☆RISHの奴らはダンスレッスンの時間だ
カルテットも皆用事がある
今は俺一人


『よし…』


俺は姿勢を正して、深呼吸しながら、ゆっくりと歌い出した


『そして君が知らずに幸せな灰になった後で
僕は今更…君が好きだって

大人になりたくないよなんて大人ぶってさ
駆けた少年の日 どうやら僕に訪れた悪戯は
相当タチの悪い不老不死のお節介
神様素敵なプレゼントありがとうなんて
到底的外れな 幼い冗談の奥に
大事に隠した片思いは察してくれないんだ

追い越してく戻れない憧憬
好きな人にさよならを

いつか見た夕焼けはあんなに綺麗だったのに
恋なんて呼ぶには穢れすぎてしまったよ
そして君が知らずに幸せな灰になった後で
僕は今更君が好きだったって気づいたよ

100年前の同じ日に君のおばあちゃんは
同じこ―――っ!!』


またしてもいつもの感覚
すらすらと出て来る言葉はいきなり誰かがくぎを刺したように、何も出て来なくなる
それと同時に呼吸が荒くなる
社長からは無理しない程度に歌い続ければ望みはあると言っていた
俺が患っている声帯ポリープは一般的なものと違い治し方が違う
普通は手術をして、禁声しなくてはならない。そしてそれをしていても完全に戻る確率は極めて低い
だが、俺の場合は手術はするが、喉に定期的に振動を与えなくてはいけない
そうしないと喉の筋肉が硬直し始めて、喉が使い物にならなくなるそうだ

だから俺は頑張るんだ…もう一度あの舞台に立つために


『っは…ぁ…ごほっ…』


それは良いとして、水を持って来てない事を思い出した
どうしようかと思っても苦しくて、動くに動けない


「灯!!?」

『っ…?』

誰かの声が聞こえるが、視界がかすんで誰だか分からない
だが、水を差しだされたのは分かったので、引っ掴んで勢いよく水を含む
その間、誰かが背中をさすってくれていた
ようやく落ち着いて、隣を見ると、相手は藍だった

美風「大丈夫なの?」

『あぁ…水、ありがとな』

美風「はぐらかそうとしない」

『……はぐらかしてないだろ』

俺はこれ以上検索されない様に、立ち上がって部屋を出ようとする
が、藍は俺の腕を掴んで引き留める

『離せよ』

美風「……」

少しばかりの殺気を放つと藍は少し怯んだ
とても平和で争いごとの無いここの国の人間にとって、俺の微量の殺気でも、怖いと感じるのだろうか
手を振り払って、部屋を出る
これ以上、俺の中に踏み込まない様に



外から誰かの歌声が聞こえたような気がした…









(※実際にそんな異例な症状はありません)
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