第2の館

□夢現
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春麗らかな日。珠紀と真弘は二人だけが知っている草原に来ていた
珠紀と守護者達は大学の春休みを利用し、季封村に帰って来たのは五日前ほど
今日は久しぶりの真弘とのデートだった
といっても別段何をするという訳ではなく、こうやって太陽の光を浴びながら日向ぼっこするというだけだった

「暖かいですね」
「そーだなぁ…寝ちまいそうだ」

そういって真弘はあくびをする
珠紀はそれを見てクスッと笑い、寝ていた体を起こしポンポンと膝を叩いた

「眠いなら膝、貸しますよ?」
「…そうだな、じゃぁ借りるわ」

少し気恥ずかしそうにしながら、真弘はごろんと珠紀の膝の上に頭を乗せる
それを見計らって、珠紀は真弘の髪を梳く
その手付きにだんだん本格的に眠くなってきた真弘は、意識を手放す前に珠紀にキスを落として眠りについた

「おやすみ…」

大人びた笑みを残して




「狡いですよね…真弘さん。不意打ちに弱いのわかっててやってるでしょ?」

珠紀は頬を赤く染めながらも、微笑んだ
この数か月で珠紀はとてもきれいになっていった
最初こそモヤモヤとしていた真弘だったがそれも杞憂だった
最近では珠紀は自分に恋したおかげで綺麗になったのだと自ら珠紀を自慢するようになった
逆も然りだ
真弘もまた、大学に入ってから背がぐんと伸び、この間170pを超えたと言っていた
それにくわえ時々見せる大人びた微笑
それは他の女性を魅了するほどの微笑であり、珠紀も時々嫉妬をするほどモテる様になった
だがお互いがお互いしか見えていないため、嫉妬という感情は無意味なものとなった

珠紀は真弘のもので、真弘は珠紀のもの

そうして二人は相手に依存していくのだ

「真弘さん。二度も私と一緒に世界の終りと戦ってくれてありがとうございます。…愛してます」

珠紀は真弘の額に口付けを落とし、微笑んだ
春の柔らかな風が珠紀たちの体を撫でる
その暖かさにいつしか珠紀の瞼が重くなっていく
ちょっとだけと念を押しながら珠紀も夢の中へと旅立っていった





「たっく…お前も寝たんじゃ、意味ねえじゃねえか」

珠紀が眠ってから数分して、今まで眠っていたはずの真弘が目を覚ました
見上げれば安らかに幸せそうに眠っている珠紀の顔が映る
真弘はそれを見てふっと笑う
そっと起こさないように右手を頬に添えて、言った

「それはこっちのセリフだ。珠紀、俺を宿命から救ってくれてありがとな。そのおかげで今俺はお前のそばに居れる。これから先もお前を守らせてくれ…愛してるぜ」

そして真弘も、珠紀がしたように体を起こし額に口付ける
そしてまた夢へと旅立った




数時間後
いつまでも帰ってこない二人を心配して探しにきた守護者たちに起こされ、あわてて起きるのはまた別の話






夢現



(二人して幸せそうに寝やがって…)
(まあいいじゃないですか。何事もなかったんですから)
(さて、そろそろ起こしにかかりますか)

(こいつらの婚礼は何時になるだろうな)
(それはまだ先になるだろうな。ま、気長に待ってやれ)

(ふふっ、お二人とも幸せそうです)
(ふむ、後でからかうのが面白そうだ)
(ケテルさん、ほどほどにしてくださいね)


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