乙女ゲームの棚

□君の羽
1ページ/1ページ

「ねぇルル、背中を触ってもいいかな?」

少し険しい顔をしたユリウスが急にそんな事を言った。

「せなか…?」
「うん、背中」

私の背中に何か付いてるのかな?

「えっと…どうぞ」

ユリウスに背中を向けると、しばらくの沈黙。振り返ろうかなと悩んでいた頃、そっと私の背中にユリウスの手が触れた。
何かを確認するように背中を撫でるユリウスの手のひらにドキドキしてしまう。

「良かった。無いみたいだ」

凄く安心したようなユリウスの声に思わず振り返る。

「あの…どうかしたの?」
「うん、凄く悩んでたけど大丈夫みたいだった」

何が大丈夫だったんだろう?ユリウスの言う事はたまに難しい…。

「何が大丈夫だったの、って聞いてもいい?」

ユリウスは少し神妙な顔で頷いた。

「ルルはいつも俺の隣で笑ってくれてそれは凄く嬉しいんだけど、いつの間にか居なくなって色んな人に挨拶したり手伝いをしたりしてる。そんなルルも大好きなんだけど、いつかこのままルルが帰って来なかったりしたらどうしようかと思って。でもそんな心配を俺がする頃にはやっぱりルルは俺の隣に居るから…もしかしたらルルには羽があって飛んで行ってしまうんじゃないかって心配だったんだ」

相変わらずの早口で、聞いている私も思わず息を止めてしまっていた。その内容の意味を理解した時、心臓がドクドクと早くなって頬が熱くて。
だけど確かめてスッキリしてしまったらしいユリウスはキョトンとした顔で、ちょっと悔しいから私はギュッとユリウスのマントを掴んだ。

「ねぇユリウス、もし私に羽が生えているとしたら…ね?きっとそれは…」

勇気を出して、言ってみよう。

「ユリウスに会いに行く為にあるんだわ」

ユリウスが目をパチパチして、私を見つめる。恥ずかしいけどそのまま私もジッとユリウスを見つめていると、ユリウスがそのまま私を抱きしめた。

「ルル、俺やっぱり君が大好きだ!本当に大好きだ」
「あ、ありがとう…私も、ユリウスが大好きだわ」

俺に会いに来てくれるなら、君の背中に羽が生える魔法を考えようかな、なんてユリウスが笑った。でもねユリウス。私の背中に羽がなくても…


(心の翼を羽ばたかせて、私は貴方に会いに行けるわ)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ