◆真昼の想いで◆



 あ、ニクスさん。
「おやアンジェリーク。お出かけですか?」
え、ええ。ニクスさんもお出かけですか?
「そうなんです。急な招待状を受け取りまして」
 ニクスさんは微笑んで青い空を見上げた。
「古い、私の親友がどうしても会いたいと……」
 最後の部分は聴こえなかった、聴いてはいけないと思った。
 なぜなら、ニクスさんとても悲しげに微笑んで、目尻に光っていたのは涙だから。

 ☆

「まったく君は――」
 ニクスは手紙とともに送られた二枚の写真を手に取ってつぶやいた。
 それは、50年ほど前親友が一緒に写真を撮ってくれとねだられて仕方なく彼とツーショットでとったもの。
 それともう一つは最近とられたもので、年老いた彼とその妻が中にあって周りにはその息子や娘そのまた孫がずらりと並んだ写真。
「みせつけてくれますね。あいかわらず」

 こんな大勢の家族に見守られ彼は天にめされた――。

 手紙はそのことを知られることと、生前に書いたと思われるニクス宛の手紙。

「またあの丘へ遊びに行こうな」

 ただ、それだけ。
 それだけの言葉で彼が自分をはじめて出会った場所でまっているということがわかった。
 ――なら、会いに行きましょう。
 ニクスは顔を上げて友とはじめてであったとある丘へと足を向けた。
「私も幸せな時を築き始めましたよ」
 そう開口一番告げなくては……ね。
 真昼の青い空に一足先に思いをはせた。


fin.


次は遥か3のお話です



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