◆ある日の夕暮れ◆
「資盛」
 将臣は息子の一人に声をかけた。
 ――といっても、維盛同様《重盛》の息子なのだが。
 けれど維盛と違って彼は父の名を語る自分のことに悪意は持っておらず、なんとなく自分と似た気質の持ち主で気が合っていた。
 歳も同い年なので互いに気安い。
 だが、最近資盛は気落ちしていた。
 彼は三度目に呼ばれてはじかれたようにこちらを向く。
「還内府」
「どうした、資盛もうすぐ戦だぞ気を引き締めなくてはな」
「戦、か」
「資盛?」
「私は戦が嫌いだ」
「俺だって嫌いだ」
「うそだ。あなたは楽しんでおられる」
「――知盛と同じに見られたくないんだが? 俺は生き延びるためにたたかっている。俺の人生設計は《天寿を全うするまで楽しく遊ぶ》だ戦なんかで死んでたまるかよ。それに俺の世界の国じゃ戦はない」
 資盛は目をしばたたいてわらった。
 そして脈絡もないことをいう。

「還内府どのには恋人がおられますか」

「――え?」
「いや、まあ……さすがにこのお歳なのですから女を知らないってことはないでしょうが」
「…………だな」
 将臣は襟首をかいてうなずいた。
「私にも恋人がおります」
「ああ、一度見たことあるぜ、結構はっちゃけた女だったな」
「はっちゃけ……あはは。元気のある女です。きっと私がこの戦でしんでも尼などならないでしょう。私がこの戦で別れる時こういわれました――」

 ――もし、この戦であなたが死んだら神様なんて絶対に信じないって寺で告げてきましたわ。
 だってそうでしょ? 私が神様にねがうのはあなたの無事のみ、そして再び私の元に還ってくるようにですもの

「そうか、ならきっとお前は生き延びられる。つよい女神様がついてるものな」
 将臣は笑って資盛の背を強く三度たたいた。
「還内府どのには恋人がおられますか」
 再び同じ質問を問われて将臣は口元を笑みを浮かべ頷いた。
「ああ、いるぜ。だから俺もあいつの元に帰る努力をするさ」




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