遥かなる日々
□必要なのは余裕
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(――譲ってけっこうわりきってんだな……。)
ヒノエはウサギを手際よく捌いていく譲を眺めながら思った。
すこし空が明るくなったときウサギが二人の前に跳びだしたのだ。
南天のような円らな瞳、ぴん、と長い薄桃の耳、淡くてかわいらしいウサギだったので思わず数見てきた美少女をおもいあねて当てはまらせようとした、――たとえば白龍の神子とか…。
ヒノエは望美にウサギを見せてやろうと考えて捕まえようとしたとき、
……ひゅっ…!
矢がヒノエの頬すれすれをかすめ、次の瞬間ウサギを見事に射抜いていた。すこしずれていたらヒノエの襟首を射抜いていたに違いない。
「譲なにしやがるんだ!」
「なにって、狩りだよ」
「狩りって……」
まあ、ウサギも食材だけど……。
手際よくウサギを紐でくぐり次の獲物を探しに視線をあたりに巡らせる。
(まさに狩人……でも望美の世界って狩人はいないとかいってなかったか)
「ふ〜ん……じゃ、オレは果物をとってこようかな。望美が前にふるーつ食べたいといってたからな。ふるーつってのは果物のことだろ?」
「ああ」
「んじゃ、とってくる」
譲がある程度の獲物を捕らえたとき、ヒノエは風呂敷一杯に柑橘をとってきた。