遥かなる日々

□必要なのは余裕
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「わるかったから、待てって、」
 ヒノエは譲の先に回り込んであやまった。譲は何か言おうとして首を振った。
「……気にしてないからいいよ」
「ふふ、そうかなしかめっ面になってるよ。で…、どこへ行くんだよ、まだ朝は早いよ?」
「――朝食の準備」
「ああ、」
 たしかに譲の手料理は神子や八葉たちに好評で、ヒノエも大好きだった。けれどこんなに朝早く起きて準備しているとは思わなかった。
 譲の具合が悪くなければ、だいたい毎日皆が目覚める頃には朝食ができあがっている。
 不思議だとおもったがいままで真相をたしかめる気は起きなかったが。
「ふーん、感心したよ。譲ってえらいよなぁ」
 ヒノエにほめられて譲は目を瞬いてすこし顔を赤くした。
「べつに、一度起きたら眠りたくないから…それならみんな喜んでくれるし」
「一石二鳥かな」
 ヒノエは悪童めいた、けれど魅力的な微笑みをうかべ譲の胸を軽くつく。
「ふふ、じゃあ俺も今日はお前を手伝ってやるよ。感謝しなよ、俺はめったに男に協力しないんだぜ?」
「ヒノエが?」
「いやかい?」
「いいや、ありがとう」
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