遥かなる日々

□師であり親友
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「俺を勝手に殺すな!」

 那須与一は苦笑して譲にいった。

 
 那須与一は譲の弓の師匠でありながら、譲の、この世界ではじめでできた親友だった。

 最初、譲が弓の稽古をしていたとき、偶然梶原屋敷に用があって訪れていた与一が譲をみてちょっと指南したのだ。

「心の目で射るんだ…そうすればいける」

 その言葉を信じて射てみたら真直ぐに弓がのびた。
「な、いっただろ?」
 そういって呆然とそして清清しい気分を味わっていた譲の背をたたき屋敷をあとにした。

 それがかの有名な那須与一だと気付いたのは後のこと。
(春日先輩も先生に師事している。なら、俺も…。師としてあおぐなら……)
 思い浮かんだのは屈託のない笑みを浮かべる自分と同い年の武者だった。
 譲は影時に与一のことを聞き出し、彼を師と仰ごうとしたが、
「よせよ、照れくさい。おれたちそう年なんて代わらないんだから、そうだ、友だちになろう! その方が気安いし、お互い補えやすい!」
 あはは、と気軽に背をたたく与一。
 気後れしたものの、譲も頬笑んだ。
「よろしく、与一」
「よろしく…えっと、名前なんだっけ…」

 それから八葉の仕事が休みの時や屋敷にかえった時、また野営地にて彼に弓を教えてもらったり、そして下らない会話をしたり…。
 同い年で気がおけない親友となった。
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