遥かなる日々

□兄弟喧嘩
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「眼鏡野郎」
「おっさん…」

 ひ…こわ!

 私は九郎さんと供に両手を握って竜虎バチバチ火花を散らす喧嘩をとめられずに見守っていた。
「お前の世界の兄弟喧嘩はおそろしいな! 俺なんか喧嘩なんてしたことないから…なにやらすごくおそろしい」
「ううん、なんだか昔は口より手が二人ともでてたから、それもすごかったけど…なんだか恐いっ!」

 ことの発端は「将臣君の誕生日だし、ひさしぶりに熊野で再会したんだしなにかやろうか!」ってことになったんだけど…目をはなした隙に険悪ムードに。
「いったいなにがあったんです?」
 相変わらずニコニコ笑顔たたえながら、喧嘩の観戦者がひとり増えた。
「べ、弁慶さん!」
「将臣君の誕生日だというので、美味しい海の幸をもってきたんですが…」
 弁慶さんのイメージでは、まっ先に『山』を思い付くのだけど…。
「やあ、望美…美味しそうな山菜だよ…って、なにやってるんだ、あの二人」
「ヒノエくん…」
「険悪な雰囲気、なに? 兄弟喧嘩」
 そういってタケノコを積んだ篭をひざの上にのせてストンと座る。
「やらせとけば? ひさびさにじゃれあうのもいいんじゃないの?」
「じゃれあうって、小さな子供じゃないんだから」
「兄弟喧嘩懐かしいですねぇ…」
 いつの間にか本当に観戦ムードになって茶をみんなの分をそそぎながら弁慶さんが呟いた。
「え、お兄さんいたんですか?」
「ええ、むしろ一人っ子のほうがめずらしいですよ、この時代」
 たしかに…先生やヒノエ君はどうだかわらないけど(謎組)、敦盛さんも弁慶さんも九郎さんも梶原兄妹も。
「私一人っ子だから…ちょっとそういうのうらやましいかも…、あ、有川兄弟のことはさておき…」
 ちらりと喧嘩を見遣ると、すでに取っ付く見合いの喧嘩になっている。

「この放浪癖!」
「なんだと、金魚のふんやろうがぁ!」

 幼馴染みのみとしては、手が出はじめてほっとあんどした。
 数分後には決着がついてるだろうから。
「弁慶さんが兄弟喧嘩かぁ…どんなふうにけんかしたんですか?」
「ききたいですか?」
「興味あるなぁ、聞かせろよ」
 ヒノエ君も興味津々で、九郎さんも二人の喧嘩を不安げに見遣りながら、ちら…と聞きたそうである。
「そうですねぇ…比叡山からかえってきてから、しばらく『意見の相違』ということで、顔をあわせれば喧嘩をしてましたね……で、暴力を一方的に受けてました…」
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