アンジェリークと愉快な恋仲間達
□シンデレラ求愛合戦?!
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■アンジェリーク・シンデレラ■
私の名前はアンジェリーク・シンデレラ。
両親は幼い時に亡くなって意地悪なヨルゴ義母さまとその二人の娘ハンナ・サリーたちと一緒にくらしているのだけれど、私は――家隷同然の生活を余儀なくされていた。
私は雑巾をしぼって、はぁ……とため息をついた。
開け放たれた窓から見える丘高い(丘というよりお山のてっぺんだけど)にそびえるお城みつめた。
明日はセレスティザムのお城で舞踏会がある。
それはルネ王子のお后さまを見極める舞踏会でもあるらしいの。
お父様が昔言っていたわ、「アンジェ、お前はいずれどこかの王子様と幸せになる運命なんだ」って。
でもいま私は王子様どころか、結婚もあやうい……。
「掃除の手をやすめてはいかんぞ」
女性とは思えない低い声にハッと私はふりかえると、仁王立ちしたヨルゴお母様が娘たちをひきつれてきた。
「はぁ〜いアンジェ!」
「ごきげんよう、アンジェ」
ご、ごぎけんよう……。
私は粗末なスカートのはしをつまんで礼を取る。
比較的二人の義姉とはうまくいっている私だけれどどうもヨルゴお母様とは気が合わなかった。
「アンジェリーク、埃をちゃんと落すことだな、こんなにも詰まっている」
クローゼット壺が置いてある裏にわざと指を突っ込んで見せつける。そんなところまで……というか陰険だわ。
とおもいつつ、
ごめんなさい、いますぐに……。
慌てて雑巾をもってふきふきしていると、三人は明日行われる舞踏会衣装を選び始めた。
そして案の定、やれ裾直せだの、ウエストがきついだのいって私に手渡してくる。
逆らいたい!
と強く思っていても理性がそうさせてくれず、それよりも身体がドレスをうけとってしまっている。
うう――このまま一生奴隷はいや……。
涙ながら明日に間に合うように裁縫をしていると、ニャーン、と可愛らしい猫の鳴き声が聞こえた。
あら? エルヴィン、上がってきていいわよ。
エルヴィンはヨルゴお母様のお気に入りの猫なのだけど、飼い主でなく私になついていた。
エルヴィンは私の足に甘えてかわいい声をかける。
ふふ、おなか空いているのね、ヨルゴ母様にいたずらしてご飯抜きだってきいたわよ。
ちょっとまってて……。
私は半分残しておいたパンをエルヴィンに渡した。