アンジェリークと愉快な恋仲間達
□痕跡
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■ひだまりの残映■
この陽だまり邸には時たま不思議なことが起こるのですよ。
ニクスさんは紅茶を優雅に飲みながら誰にいうでもなくそう呟いた。
まずその言葉に疑問の声をあげたのはレイン。
「不思議なことだと?」
「ええ、そうです。不思議なことです…いろいろとね」
「勿体ぶってないで具体的にいってくれ」
「……ふふ、わかりましたレイン君」
この屋敷は実は全く改装していない。
厨房もあったままで、すこし手入れしただけ…とのことだ。
「どこが不思議なんだ?」
「不思議ですよ。なぜならばここ150年ぐらいで人々の生活はずいぶんとかわってます、なのにこの屋敷はそのままなのですから」
ニクスさんは暗い影をひとみに落としながら続けた。
「電灯というのもここ最近のはなしですし」
私とレインは顔を見合わせた。
「うまれた時からあったけど…?」
「そうですね、あなた方にとってはそれがふつうですね。ではレイン君、君がさがしているアーティファクトは今の文明では開発不可能でしょう?」
「たしかにそうだが?」
「ふふ、ではこの邸の様式だって昔は真新しかったはずですよね…厨房にはオーブンがあり、庭には電灯が自動でついたり」
「ああ、たしかにそうだね」
ジェイドさんとヒュウガさんも目を見張って驚く。
「私もここにすみはじめて数年ですが、私もこの邸のことを実はよく分かっていないのです」