大航海時代4〜ふなのり〜
□「嵐を超えて東アジア!」
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■戦国海戦■
剣戟が鳴り響き、血煙があがる。
砲撃がうなり、海が高く波打つ。
海になげだされた船員もいるかもしれない。
――ま、これぞ海戦の醍醐味だよね。
長く使ってるお気に入りの船って、けっこう幽霊さんいそうだよねー、と悠々そんなことを考えながら僕はなんとなしに、襲いかかってきた水夫さんの剣をシミターでかわして凪ぐ。
「いてーよ、いてーよっ!」
――あんずるな、峰打ちだ。
って峰打ちってなんだろう?
まいっか。
「提督ってあくまだよねー」
「ちゃっかり、人殺してるしな」
さて、ユキヒサはっ――て、どうしてかこまれてるのー!
その声にクラウ以下航海士達はユキヒサをみやる。
彼は数十人を相手に船縁へと追いやられていた。
「なんで、やつ、戦わねーんだよ!」
「あの陸での剣捌きはどうしたんでしょう?」
とゲルハルトさん。
「やぱり、陸向きの人間なんだろうか?」
――ユキヒサ!
僕が叫ぶと、ユキヒサはハッ、として顔をあげた。
僕はホッとしてユキヒサのもとに駆け寄ろうとしたとき、背後に突然大きな影が落ちてきた、殺気とともに。
――え?
ふり向いたそこに、海賊・クルシマ!
「死ねぇ!」
うわあ!
間一髪僕は脇に逃げて、一撃を食らわずにすんだけど、二合三合と刀が空をきる。
僕の皮膚すれすれに。
お館さま大ピーンチ!
だから助けにきてよ、ほら、ユキヒサ!
「ラフィのやつ遊んでやがるな」
こめかみあたりに指をやってため息をつくクラウ。
ダメだよ、内緒だよっ、こんな奴一撃でたおせるけどー!
――お館さまがあぶなーいって、僕の予想だときてくれるはずなんだから……
「――空波斬(くうはざん)!」
ごごご、と風がうなって、透明な竜巻がクルシマを包み、切り裂いていく。
「うぎゃああ!」
そうだったのか、ユキヒサは『幸村(ゆきむら
)』じゃなくて『頼久(よりひさ)』だったのか!
大誤算!
じゃあ、僕は『お館さま』って呼ばれるんじゃなくて『神子』って呼ばれるべきだったのか!
「いや、鬼だろう、」
みんなコクコク頷きあう。
なんだと〜鬼の首領だといいたいの?
「いや、セフル。髪型そっくりだし」
そんなに性格悪くないぞ!
「わるい」
と一同。
ふーんっ、と頬を膨らませそっぽをむく僕。
――ならお館さまってよばれてたほうがいいや。
しかし、
「いやーん」
なんだかだみ声の色っぽい声が。
おそるおそる振り返ると、服が千々に服がちぎれて真っ裸のクルシマはミロのビーナスよろしく男の大事な部分を手で隠して立ちつくしていた。
――きもちわるい、
久しぶりに船酔いが突如おそってきたけど、きづけばユキヒサを取り囲んでいた海賊さん達もビーナスポーズ。
――僕も含めてふなのり全員戦意喪失。
ただ、ユキヒサ独り、うるうると涙ぐんでいる。
「――拙者、人が斬れないでござる」