文章置場

□徒花の花筐
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あるところに、武家に生まれた娘がいた
娘の父親はある大名に仕える兵であったがその暮らしぶりは貧しかった。娘は不自由な暮らしではあったが不満も言わず、父と母と幼い弟妹たちを支えて生きてきた
そんなある日、娘のもとに縁談が来た

相手は父が仕える主である石田三成
日の本が豊臣に傾いているこの時勢、その左腕と囃される男だ。信じられないほど身分違いの縁談に驚き疑ったが、家族を養うため娘はその縁談を呑むことにした

祝言の日
娘は初めて相手の男の顔を見た
不健康そうな顔色に、銀糸からのぞく鋭い目。体つきはほっそりとしていて、痩せすぎているくらいだ。今にも死んでしまいそうな外見とは裏腹に、放つ雰囲気はそれだけで人を殺してしまいそうなほど禍々しい
この人と夫婦になってやっていけるだろうかと娘は思うのだった
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