文章置場

□三成
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目の前を過ぎるたなびく髪に息を呑んだ
友人らしき女共の後ろを談笑しながらついて歩くあの女は間違いようもなく、私のもとを去った裏切り者だった
「貴様ッ・・・!!」
荒くなった声を発し、勢いのまま女の肩に掴みかかると、その女は一瞬驚いた表情を浮かべ次の瞬間には怯えた顔を見せる
煩い周りの女共は一瞥をくれると逃げ出した
「ど・・・どちら様、でしょうか・・・?」
「・・・ッ貴様は、私を覚えていないと、・・・そう言うのかッ!?」
「ひ、す、すみません・・・」
困ったように眉を下げる仕草が、私の知る女と重なった。どうして、どうしてこの女は覚えていない。私を裏切った過去を、私の慟哭と涙を
「私は貴様を赦さない・・・」
声が震え、私の眼に膜が張る
思い出されるのは、この時代に生を受ける遥か以前。血みどろの中で刀を振るったあの頃
この女は確かに私の隣に居た
「どうして私を置いていったのだ…」
訳が分からないといった表情をする女に虚しさが募るだけだった

『・・・三成様、貴方様を置いて・・・先に逝くことを・・・御許し下さい・・・』
『ッ駄目だ、許可しない!それは私への裏切りだ・・・!やめろ、いくな・・・私のもとから去るな・・・!!』
『・・・暫しの、・・・別れに御座います・・・』
『おい!!・・・   !!』
『・・・ああ、・・・願わくば、貴方様とわたくしめとの再会が・・・少しでも・・・永くあれ・・・』

それきり女は言葉を紡がなかった

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