追走

□08
1ページ/1ページ




「おいっ、ねーちゃん!梓ねーちゃんってば!なーんでオレにんな事黙ってたんだってばよ!」


『えーナンノコトデショウ』


「とーぼけんなってばよ!そりゃ忍びだってことは知ってたけどさ?!オレさ、オレさ、てっきり中忍くらいだって…!」



『そんな事誰も言ってませ〜〜ん』



「ムキー!!」



少しだけ遠くに、ナルトのあのバカデカい声が聞こえる。それに応える超テキトーなノリの、あの上忍の返事も。


『まー先に自分のお家帰っときなよ、後でご飯作りに行ってあげるからさ、カップ麺は我慢して待っときなよ』


「えっ、マジ?!やったーラッキー!わかったってばよ!」



「…」


三代目が解散を言い渡してから、俺ら下忍は殆どがその場に残ってた。

あの時の瞬身に呆気に取られてる猛者系のヤツらと、修行見てもらえるってんで燃えてるヤツ…あ、そいつぁ見た感じロック・リーくらいか。

あとは三代目にどんなヤツなのか問い詰めてる女共と、ナルトと帰ってんのを不思議そーに眺めてるヤツ。
とっとといなくなってんのは、サスケのヤローくらいなもんだな。


…ま、そーだよな。あの梓とかって上忍が一体何なのか…オレが一番問い詰めてぇぜ、本当言うと。


「ちょーっと、シカマル!なんなのアレー!あのキレーな先生に、あんな凄いパフォーマンスされるなんて!どうしちゃったワケ?知り合い?」


「ほ、ホントだよ!ボク、隣にいたけど何が起きたのか全くわかんなかった」


「…あー、オレだって知んねぇよ…」


昨日の、アレだって。
なんなんだよ…オレの名前、あんな風に呼んで
絶対初対面だ…が、あの時の感覚も、どう考えたって説明がつかない。

…あー、あれこれ考えんのめんどくせーってのによ

梓センセー…ね、



「はぁ〜〜〜……。」


「ちょっ、オッサンくさいわねーあんた、どうしたのよ!てか、結構あれ、羨ましがられるんじゃないの?」


「…めんどくせーなーって思っただけだよ…そいつも含めて」


「うん…特になんか、シノにキバとかある意味リーとか…釘付けって感じだったし」


「はぁ〜ぁ…ま、オレがあんま話聞いてねーでボーッとしてたからテキトーに選ばれてやられたんだろ…」


やっぱ、言えねぇな。この二人にも、昨日の事は





ーーーーーーーー



「んじゃ!ねーちゃん、後でね!」


『はいはい!夜はいっぱいお腹すかせて待っててよ』



ナルトはさっきまでのムカムカなんて忘れて、にっこりとした笑顔を浮かべて家の方へと帰っていく。

急に実は上忍でしたなんてまぁ驚くよね…何はともあれ、ご機嫌取りは成功したみたいだ、うん

とりあえずは外れにある家に戻りたいところだけど、ご飯の買い物でもしにいくかー…の、前に。



『…さて。私の左斜め後ろの木陰に隠れているキミ。遠慮しないで出ておいで』


一つの気配。三代目に紹介してもらってから、ナルトと喋りながら歩いてる時も、ずっと突き刺さるように感じていた気配が付き纏っていた

流石に暗部なんてやってたからそういった気の察知には敏感な私だけど、なかなか尾行は上手みたい。だって、現にナルトはさっぱり気付いていないのだから、なかなかだ。

そして、観念したように木の影から現れたのは。



『えーと、キミは…うちはサスケくんね?7班…ナルトと同じ班で、カカシ先輩の受け持ってる所の』



「…ああ。そうだ」


あーっと、アレだよな…ナルトの想い人のサクラちゃん…って言う子の、想い人か。ナルト、かわいそーに…イケメンくんじゃないの。

三代目が言うには、あのうちは一族の最後の生き残り…私のいた世界では、うちはってどうなってたっけ…うーん、すごい一族だって知ってるのに、思い出せない。ああ、こんな記憶にまで時空を渡った影響が出てるのかな?厄介だ…



「…アンタ、強いんだろ?カカシとどっちが強いんだ」


うわ、めっちゃ目がギラギラしてる。

『うーん、カカシ先輩と比べてかぁー…どうなんだろ?カカシ先輩と手合わせした事ももちろんあるけど、お互い本気でやりあった事無いから、分かんないな。どうして?』


「…ただ…、上忍ならそれなりの実力があるはずだろ。俺は強いヤツと戦い、そしてもっともっと強くならなきゃならない。だから」


『…ふむ。今ここで手合わせがしたい…って事かな?』


「フン…話が早い。…今これから、始めてもいいか?」


『あぁー、この演習場の周りはちょっとまだ人がいるみたいだから…そしたら場所を変えようか。手合わせは全然構わないよ。』


それじゃあ行こうか、それを合図に演習場から少し離れ、より民家が遠く、木々の少ない比較的広めのスペースへと移動した。


『うん、この辺でいいかな。どうする?手合わせはどんな方式がいいかな?』


「愚問だな。どちらが戦えなくなるまで、だ」



『ええ〜それはちょっと困ったなぁ…!でも、戦えなくなるまで…ね、了解。それじゃあ…うちは一族のお手並み拝見といこうか、サスケくん』


「…フン。いくぞ!!」


『オーケー。開始!!』


開始を宣言したと同時に、手早く印を組んで大きく息を吸い込むサスケくん。
…あれ?ちょっと待って、彼下忍だよね?あの印って…


「火遁・豪火球の術!!!」


『(おぉっとやっぱり、下忍とは思えない術を…!でもまだ完全じゃない、か)

水遁・水陣壁の術!!』


私に襲いかかる炎の塊。
でも、印を見て術の予測はついてたから難なく足元から水の壁を展開させて防御する。
水の無いとこで作る水陣壁じゃあ、多分完璧な豪火球が飛んできてたら流石にひとたまりもないだろうけど、これくらいならこの術でも十分だね。

けれど相手は下忍。仮にも上忍に忍術を使わせるとは…なかなかやるじゃん。


『いいねぇ、キミ…それじゃこっちからも、いくよ!!』



「!何っ、無傷だと…?!」



『口寄せ、苦無・連(レン)!!』


「?!」


ボンッという音と共に煙を立てて現れたのは宙に浮かぶ大量のクナイ

ま、アカデミーの先生を任されるって事で作っといた練習用の刃の無い軽い苦無だから、ただのクナイ風の鉄加工品って感じ。当たっても、ちょっとアザ出来るかな〜ってくらいの威力だから、心配ない。
遠慮なく、サスケくんへ向けて打ち込んでいく


『ほらほら!逃げるか避けるかしないと、当たっちゃうよ!』


「クッ…!」


眉を顰めながらも、流石に聞いていた通り…天才ってとこかな。身のこなしが下忍レベルをすでに超えてる。避けてる間も、どうやって私に一矢報いようか、虎視眈々と狙ってる…そんなカオをしてる…


ドスッ


「!!」


『!おっと…喰らっちゃったかな。刃を丸くしてあるとは言え、…?!変わり身…っ』


「…っ、甘いぜ!!」


お腹に三発、ついに喰らったかと思ったその時、煙を巻き上げて現れたのはサスケくんの代わりに、浅く刺さった偽クナイと、丸太。とっさに変わり身の術を…

そして、後ろにはあの気配。…やられたね


『…口寄せ…手裏剣・縫縛(ホウバク)』


「っぐ……ッ?!」


私の背後。死角に上手いこと回り込んだサスケくんは、真っ直ぐにこちらへ向かってきた

けれど、そんな事あろうかともともと仕掛けてあった罠。
クナイを飛ばしてる間に、ストックしてあった巻物から取り出して地面に放った印を、私に真っ直ぐ近づいたサスケくんは気付かずダンッと踏みしめる。
そして、私のチャクラに反応して展開する術式

それはみるみるサスケくんを取り囲み、捕らえた



『いよぉ〜っし捕まえた!これで戦えなくなったよね?サスケくん。今日はとりあえず手合わせはここまで!』


「っく…迂闊だった…こんな手裏剣術まで使えるのか…」


『いいや、これは本物の手裏剣だし、普通に投げたら場合によっちゃ傷付けちゃうからね。今のは手裏剣術とはちょっと種類が違う。口寄せって言って、好きな時に好きな口寄せ動物や忍具などを呼び出す術なんだ。私はその口寄せ術が得意でね』



「口寄せ術…」



『そう。今のは君がこの口寄せ術式を踏んだ事で発動した、所謂トラップ式。相手を囲い込む用に、ワイヤーを付けた手裏剣が相手に絡んで地面に刺さり、動けなくする…傷付けずに生け捕る為に編み出した、私の実戦用トラップだよ。前以て術式の中に封じた忍具の仕掛けを呼び出したんだ。』


「くそっ…こんなに簡単に捕まっちまうなんて…」


『いいや…君は忍術が相性的に有効でない事を見抜いて、隙を作り体術に切り替えた。それはとてもいい判断だったよ。』


「……」


『ただ、近づき過ぎてもこうしてトラップを仕掛けられる可能性もあるから、注意してね?君は今も十分下忍の中ではトップクラス。でももっと強くなるよ』


「チッ…アカデミーの授業のつもりかよ」


「あはは、まあまあ!そんなスネないでよ、ちょっとしたアドバイスだから。私にコレ〔実戦用〕を使わせたんだから、大したものだよ、サスケくん。それじゃあ…解!!』


解の印を組むと、ぼふんと消える手裏剣とワイヤー。こいつはまた、きっと近いうちに暗部の任務なり上忍としての任務なりで、役に立ってくれる事だろうな。
解放されたサスケくんは、腑に落ちない表情をしながらも、私を見た



「…おい、梓って言ったな」


『(呼び捨て…ま、まあいいか)うん!そうだよ。どうしたの?』


「…また…今日、みたいに…何つーか、…」


『ん?……!あぁ、修行?いいよ、また今度やろうか。頑張ったね』



「…っ!」


素直じゃない子なだけで、アレかな。案外いい子っぽい!
私も思ってたよりも動かされたし、健闘を讃えてそのツンツン頭を撫でてあげると、顔を真っ赤にして後ずされた。
…そんなに怒んなくても


「…いいか梓、忘れるなよ。また挑んで、アンタのその余裕ヅラを無くさせてやる…」



『うん!楽しみにしてるよ!』



「〜っ…」


『あっ、ちょっ…、行っちゃった』


普通に成長が楽しみだから楽しみって言っただけなんだけど、また怒らせちゃったかな?あれか、ちょっとプライド高そうだし…ナメてると思われちゃったかな。うーむ…ああいうクールな子相手は、気をつけないとな。先生するわけだし。うん。



『さーて…よし!んじゃ、お買い物してナルトん家行きますか!』










「ッチ…何なんだよ…あいつ…//」







end


大変遅くなりましたが、再スタートです。
実は、もっと先まで書いていたのですが、間違えてメモを消してしまい書く気がしばらく一向に起きなかった次第です、はい。
進むはずだった予定の話とは既にもう全然違うので、ゆっくり手探りでの執筆となりますが、ご了承ください。



紫苑



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ