追走

□07
1ページ/1ページ




ソイツの第一印象


"ヘンなやつ"。



第二印象…、



------



いつもの任務終わりの午後

今日はチョウジやいのと合同じゃなく単独で、ついこの前卒業したアカデミーの手伝いをした

何で1人であんだけの書類整理やらせんだ、ったく…



真っ直ぐ家には帰らず、いつもの日課で特等席へ向かう


すぐ帰ると、母ちゃんがうっせェからなぁ…


特等席でゆったり雲眺めて寝て時間を潰すに限る。



そして、いつもの特等席へ向かうと、今までにいたことの無い先客がいた

ここはチョウジとオレくらいしか来ねえとばかり思っていたが…



『…、』



「女…?」



遠目から見るに、女…だが、ベストやナリでどうみても忍だ、しかも…中忍以上の

こんな時間に何やってんだ…?


ひょんな好奇心から、顔を覗いてみた



「…ッ!!!」



ズキン、




いきなり頭ン中と胸に、衝撃が走る。



「…こいつ…泣いてる…、?」



衝撃が走った理由は、それだけ…か?

…よく分からない。


ただ、こいつを見てると、なんか…



『…ん、』



「!」



ふと小さく声を上げて、ゆっくりと目を開けた女。

その目を見て、またどこかがズキンと痛んだ気がした


そして、オレと目が…


『シカ…マル…?』



「!!!っえ…!?」



いきなり飛び出したオレの名前。

何で知ってんだ…?


そう思う前に感じたものは

"安心"と"懐かしさ"


なんなんだよっ…初対面だろ!
意味わかんねぇ…、



『シカマル……っ!!!』



「おわっ、ちょっ…!」


いきなりオレに抱き付いてきた女

こいつ、一体なんなんだ…っ



「ちょっ、待っ…!!」



『ぅうっ…う……、 っえ…??』



オレを見て、再び泣きながら抱き付いてきたそいつも、冷静さを取り戻したのか、オレの背中に回る手の力が抜けていった。
だんだん落ち着いてきたのが分かる



「あー…えっと、アンタ誰ッスか?確かにオレ、シカマルですけど…」



『…あ…』



「っ…」



自分でそう言ったは良いが、なんとなく罪悪感。

つか、めんどくせーから突き放してハイ、サヨナラで終わるのに…

動揺した女の目に、どことなく心が痛んだ



『っ…あはは!ゴメンね、ちょっと寝ぼけてたみたいで。私は上忍の梓です、初めまして』



「!…は、じめまして…」



初めまして。
そう、初対面の相手には当たり前の挨拶

…どうも、しっくりこねぇ…



女は梓、と言った

さっきの今にも崩れちまいそうな泣き顔も一変、わざとらしいくらいニカーッと笑って手を差し伸べた梓


それに、何故か名前を知られてたが一応、「奈良シカマルです」と名乗ると妙に懐かしい手と握手を交わした



『よろしくね、奈良くん』




これが、梓との出会い


第二印象は、






「こんなヤツだったか?」





…だった。



------



あれから家に帰って、フツーに飯食って寝て、起きた朝。

今日は三代目から、俺ら十班やらナルト達七班やら、とにかく同期のヤツらが忍者アカデミーに召集された。


任務では無いらしいが…、

めんどくせーな…


アカデミーの前には、既に俺以外のルーキーが集まっていた



「シカマル、おはよ」


「おう、チョウジ」


「あ、シカマルー!あんたおっそい!!」


「あ〜、へいへい…」



時間には間に合ってんだからいーだろ、

そう適当にガミガミうるせえいのをかわして前を見れば三代目の姿。


「三代目のじーちゃん!重要な報告ってなんなんだってばよ?もしかして全員で長期のSランク任務とか…」


「んなワケないでしょ、バカナルト!!」


「フン…」


ナルトのヤツがいつもの如くバカやっている…が、ムリねぇな。

なんでわざわざこんなとこに俺達を…


他のヤツらもざわざわしてたが、次の三代目の言葉で俺の疑問は驚きに変わった。


「ゴホン…揃ったようじゃな、よろしい。それではまず紹介しよう…諸君らの担当上忍が不在の時、代わりに君達の担当をしてくれる、


上忍の、梓じゃ!」



「…!」


「ねーちゃん!?えええぇっ!!?」



思わずドキっとした…

記憶に新しい昨日の、アイツだ。

てかナルトのやつ、ねーちゃんっつったか?
似てねーにも程があるだろ…、



『ふふ…何人かは、知ってる人もいるかな?

改めて、初めまして。君達の副担当上忍の梓です、よろしくね!』


「うわぁ…キレイなヒト…」


「あっ、あの人見た事ある!確か、忍具屋さん行く途中で…」


再び周りがざわざわし始める

…まぁ、確かにキレーな部類だろうな

シノとかずっと黙ってるけど、アレ絶対ガン見してるだろ…


するとさっき喚いてたナルトがまた何やら動き始めた。



「なぁ三代目のじーちゃん!ねーちゃんって上忍だったの!?!?」



「おお、そうじゃ。お前より何百倍と強い」



「むきィー!!!梓ねーちゃんもなんとか言えってばよぉ!!」



『フフン…何百倍じゃない、何千倍も何億倍も強いよ!』



そう言って笑い飛ばす梓に、緊張気味だった雰囲気が崩れた

昨日の、繊細な部分なんて微塵も感じねえくらいに豪快で。



「梓は訳あってしばらく木ノ葉を離れておってな、これを機に上忍として復帰した事で皆と関わりが深くなるじゃろう。君達の事は梓にだいたい話してある」



『みんなの顔や名前、だいたいの性格とかは火影様から聞いてます。だけど、任務や修行を通してもっとたくさん君達を知りたいと思ってるんで、そのつもりで!』


あの時オレの名前呼んだのは、そういう事か…

いや、でもあれは…



『…ねっ、奈良くん?』



「!!ぅ、わ…っ」



少し思考に浸っていたら、気配も無く一瞬で目の前に現れて顔を覗き込んできた梓。

三代目の隣に立ってたのに…

驚いたのは、どうやらオレだけじゃなかったらしい

サスケやネジみてーなのも例外なく、梓を見つめていた



『私はこのアカデミーで教師も任される事になったから、良かったら色々教えてあげるし修行も見るよ。いつでもおいでね♪』



「…という訳で、今日の呼び出し内容は以上じゃ、解散!」



ポンポン、

とオレの頭に軽く手を置くと、


『驚かせてゴメンね』


と耳元で囁いて、梓は帰っていった。


周りから羨ましいだの何だのぼんやり聞こえたが、オレはしばらく動けないままだった。










end

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ