追走

□06
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「おい犬、方角ホントにこっちであってんのか?」



「口の聞き方に気をつけろ鳥!」



「あ゛ぁ?口の聞き方に気をつけんのはテメーだ!梓が呼んだたァいえ俺様の上に悠々と乗っかりやがって…振り落としてやってもいいんだぞ?!」



「コラコラ、2人とも…ケンカはやめなさいって」


「「黙ってろ(カカシ)人間!!」」


『「…;」』


私達は今、上空にいる。

里の蔵から盗まれた物品の奪還と、盗んだ人達の調査及び捕縛の任務だ。

カカシ先輩の口寄せ動物、パックンに手掛かりの忍具のニオイを嗅いでもらって位置を掴み、私の口寄せの八咫烏(ヤタガラス)に運んでもらっているワケだけども…


…仲めっちゃ悪いな…(汗



「おい犬、ついでにそこの人間にも教えといてやる。俺様は忍鳥の頂点に君臨する長、焔(ホムラ)様だ!!覚えておけ!」



「ハッ、見栄を張るでない!そんなワケ…」


「…梓、マジ?」



『…マジなんですねコレが』


「なんじゃとー!?」



そう、マジなのだ。
パックンが口をパクパクと(ダジャレじゃないよ?)している…ムリは無い。

ものすごい口が悪いけど、焔は紛れもない忍鳥の長である。
私が口寄せする動物の中でも、雲外鏡の霧雹に並びお気に入りの子で、もちろん焔も、私以外は呼び出せない。

まあ世界は変わっても一匹しか存在しないのかは分からないから、たぶん…だけど。


「言っただろーが、底辺のイヌッコロ如きが俺様に楯突くんじゃねェ」



「コ ヤ ツ…っ!!!」


『ゴメンパックン私から謝るまじゴメン!!』








「…ム、」


「…おう、ここか」


この調子でしばらくなんやかんや言ってる内に、パックンがまたニオイを察知した

上から地上を見てみると、前方に館のようなものが見える。
…アジト、なのかな。

焔が下降を始め、地上に降りる。私とカカシ先輩が焔から降りて、パックンは探索専門で非戦闘用な為にカカシ先輩に引っ込められた


そして、遠くの茂みから館を見る



『ありがと焔。…先輩、アレっぽいですよね』



「ああ…明らかに」



『まだ気付かれてないけど見張りが居ますね…』



「そうね…しかも、わんさか並んじゃって。…ここは囮と潜入に分けたほうがいいな…じゃあ囮は『私がやります!』



…?!
…危険だぞ?俺が行
ったほうが、」


『大丈夫です!ほら、焔目立つし…ね?』



「うっせぇよ」



「…梓…本当にいいんだな?」



『はい!それに…



久々に、暴れたいんですよ、』


最近は暗部の仕事で、隠れてコッソリこなす任務しかなかった

八咫烏は太陽の化身とも言われ、とても神々しい姿をしている。…まぁ、悪く言えばピカピカしててかなり目立つ。

更に、火遁系忍術最高峰の力をもっていて、コッソリ行う任務にはなかなか呼び出せず、今に至る
焔は好戦的だからウズウズしているんだろう

…私もたまにはバリバリ戦わないと、体が鈍っちゃうからね。


『と、言うわけで。…潜入と物品の奪還は頼みました。私は何人かこっちで捕まえときますんで』



「…分かった」



『んじゃ…いくよ焔!!』



「おう!!」



私のその声でカカシ先輩と私はダッと駆け出す。

私は館の真正面へ、先輩は反対の裏側へ。

私の役目は囮。気配をワザと消さずに突っ込むと見張り達がなんだなんだと声を上げて館の中の仲間を呼び出し、館の前にはわらわら忍達でいっぱいになる

…大成功だね。


「何者だ!!」


「木ノ葉か?…1人だと!?舐めやがって…やれ!」



『ちょっとは手加減しなよ〜?いっけー焔!!ぶっ放せー☆』



「よっしゃア!!


火遁・烈火奏(レッカソウ)!!」


途端に、天まで届こうかというほどの火柱が上がり、何人もの忍がそれに飲み込まれる。
一応、焔も手加減はしているみたいだ。

普段ならこの術で広範囲に渡って焼け野原になっちゃうからな…

そして、恐怖から逃げ出す忍達



「うわあぁああ!!!」


「なんだコイツ…!!ひとまず逃げ、」




『逃がさないよ〜!
雷遁・雷刃籠(ライジンロウ)!!!』



そしてすかさず、逃げ出す忍達の周りを雷を具現化した刃で取り囲む。
そして、電撃を喰らって動けなくなった忍達を口寄せしたワイヤーで瞬時に縛り上げ、術から逃れた忍も気絶させて捕まえた。



『さぁて、こんなもんかな?』



「流石はお前と言ったとこか。なぁ?」



『ふふ、ありがと。焔はまだ暴れ足りないだろうけどゴメンね』



「フン…またお前が俺に相応しい場所に呼ぶのを待っててやるよ。…お、あの人間戻ってきたぜ」




『ん?…あ、ほんとだ!カカシ先輩〜!』



「そっちはどうだ、って…
聞くまでもないか。ハデにやったねぇ、こりゃ。」



『あはは…で、先輩の方は?』


「蔵の中身はこっちで回収したよ。…ま!どっかのだれかさんが全部惹き付けてくれたからやりやすかったかな」



『えへへ…すいません』




…この日の任務は、あれから忍達と蔵の物品を木ノ葉に送り、無事にカカシ先輩と帰還した。

木ノ葉が行った尋問によると…

盗んだ人達はあれだけの事をすれば流石の木ノ葉も多くの忍を何日かかけてアジトの捜索やら討伐やらで送り込み、手薄になった里を襲えるだろう、という魂胆だったらしい


しかし数日はかかるだろうと踏んだアジトの探索は翌日で成され、入れ違いで襲うつもりが逆に不意を突かれてしまった、だそうだ。


尋問を行ったイビキさんに後から聞くと、かなりアッサリ喋られて逆に心配になったと言っていた。


その任務から私は幾多の任務をこなした

単独もあったし、カカシ先輩とはペアをいっぱい組む機会もあって、他の忍の人とも暗部としてや上忍として、任務を遂行した事も多々あった。

ナルトもぐんぐん成長して、たまに修行を見てあげたりして、そんなある日のこと…




「ねーちゃんねーちゃん、聞いてくれってばよ!!!」



『おう、どうしたナルト〜!』



「オレってばついに忍者になったんだぜ!」



『!スゴいじゃん、やったねナルト!!!』


ナルトが家に遊びにきて、突然の嬉しい知らせ。

チャキッ、と小気味の良い音をたててナルトが着け直したのは額当て。

忍者の証であり、誇りの大切なものだ。


わしゃわしゃとナルトの頭を撫でて、思いっきり褒めちぎってあげた


『良くやったね、ナルト!』



「うん!コレ、イルカ先生って人がくれたんだ。…オレを認めてくれたんだってばよ」



『そっか…良かった。その人の事、大切にするんだぞ!』



「おう!もちろんだってばよ!」


嬉しそうにニカニカと笑うナルト
私とあった最初の頃には見ることの出来なかった顔

ナルトを認めてくれた人、か…。
そういう人が、もっと増えてくれたらいいな


『友達はどう?出来た?』




「友達っつーか…イタズラ仲間みたいのはいるってばよ!

常に何か食ってるヤツとか、犬ずっと連れ歩いてるヤツとか、いっつもボケーッとしてずっと雲見て寝てばっかいるヤツとか…あ、ちなみにムカつくヤツはサスケ!あいついっつもスカして…」
『…雲…かぁ、』




「…へ?」




雲。

それは、私の中で、とても大切なキーワード。




"お前と一緒に見る雲が一番好き"



頭の中に残る愛おしい声



「…ねーちゃん?」



『!んん、なんでもないよ、ゴメンね』




不思議そうに私の顔を覗き込んだナルト。

…ちょっと、外出て頭冷やしてみるか…




気分転換にでもと思い、私はナルトにちょっと出掛けてくると一言残し、家を出た。





『…一番良く見えそうなとこは〜っと…あ、』




立ち並ぶ家々を飛び越えて、バカみたいに雲を眺められそうな場所を探す。



すると、記憶の片隅にあったものと同じ景色が目の前にあった。




特別変わった場所じゃない



けど、確かに覚えている



ベンチと、それを覆う小さな屋根のある、2人の特等席


不思議だ、ここは私のいた木ノ葉じゃないハズなのに…




『…あ…、っ!?』




ゆっくりと近付いて、そのベンチに座り、空を見上げると、浮かぶキレイな白い雲。



見た瞬間、何かがリンクしたような感覚を覚える


途端に頭が痛くなって、頭を抱えて、ベンチに倒れ込む。



頭の中で次々に呼び覚まされる、愛しい人の記憶。




"お前には、長い髪が良く似合う"




"ずっと一緒にいような"




"来世で…一緒んなろうぜ"






―…"愛してる"。





『ーッ!!!!』




愛しい声も

顔も、

姿も、

名前も、

何もかも。





『シカ…マル…、っ』




思い、出した。



ずっと焦がれた、愛しい記憶を



ふと懐にいつも仕舞っていたロケットを開けば、写真の私の隣にあったボケボケの影は無くなり、はっきりとシカマルの姿があった。




思い出せた喜びと同時に、私をかばったあの背中が頭に浮かんで、どうしようもなく涙が溢れた。

一度に失った大切なものと、それを守れなかった自分の無力さをまざまざと感じたあの戦争が頭の中で巡る


そして目を閉じ、いつの間にか眠りについてしまった…




…目を覚ましたら、これまでに無い衝撃を受けるとも知らずに。









end

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