追走

□05
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『…んでね、そんときにガツンとかましてやったわけよ!!』




「へー!!梓ねーちゃんかっこいーってばよ!」




『へっへーん、でしょでしょ?』





ずいぶん前に火影様に戴いたお部屋


特別広い訳じゃないけど、ひとりで住むにはもったいないくらいの場所だ



そこにいつものようにナルトを呼んで、私の武勇伝やらを語ると、ナルトは目を輝かせてグイグイ食いついてくる



…あの日からだいぶ経つ。


ナルトはどんどん明るい子になって、私の"イタズラ"を学んでか、里一番の目立ちたがり屋になり、立派にすくすくと成長している



その間に、私もいくつか任務をしたが、暗部といっても暗殺だけでなく潜入任務や情報収集、貴重物品の奪還まで色々こなしてきた。
暗殺の仕事は…きっと火影様も気が引けるのかまだなくて、何不自由なく生活している


そして今日は、初の合同任務の日。




『…さ〜て、そろそろ行ってこよっかな!』




「えぇ〜ねーちゃんもう行くの〜?」




『しゃーない、任務だ任務!ほれ、ナルトもアカデミーあるんでしょ?』




「む〜…分かったってばよぉ…」



ナルトには、私が忍だという事は話してある。


現にそうだから嘘ではないけど、暗部だ上忍だと言うのには少々気が引ける年齢だった。




合同任務なんて久々だな…



里の中心街からははずれた所にあるから、そこから真っ直ぐ火影様の屋敷へ向かった。


私のもう一つの裏の顔…躑躅(ツツジ)の名と、その面を纏って…





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コンコン、



「…火影様、よろしいですか?」



「おぉ、カカシか!入りなさい」



「失礼します」




火影様から先日下されたBランク任務。しかも、ペアで行う捜索任務だそうだ。



相手はまだ知らされていないが…何故ペアで行うのか疑問に思った




「それでは…、!!…来たか、ツツジ。」



シュンッ…





『…此処に』





「?!…、」




音も無く俺のすぐ隣に現れた忍。


仮面やベストを見て暗部だとはすぐに分かるが、見覚えが無い。


暗部は暗殺のスペシャリスト。当然気配を消すことだってたやすい、でも…全く分からなかった。



低く地を這うような声。でも…女?見たところ年下のようだが…、誰だ?

俺も昔暗部だったが…こいつからは、段違いの実力差を感じる




「カカシ、此奴が今日お主と任務を共にする、ツツジじゃ。」



「はい。…はたけカカシです。よろしくお願いします」



『…(ペコ』




「…仮面を外しなさいツツジ。今日は上忍としての任務を与える。」



「!」



火影様、何を仰ってるんだ…?
暗部の仮面は素性を知られないようにするもので、そう簡単に


カパッ、



『…なーんだぁ〜そうならそうと言ってくださいよ、3代目!』




…外した…(呆気




『えーっと…私は梓と申します。カカシさん、今日はよろしくお願いします!♪』




「あ、あぁ…」




…さっきまで誰をも寄せ付けない気を纏っていたのに…。
低かった声も、仮面を外した途端優しく明るい声色になる

更に、100人見たら100人が綺麗だと言うであろう、まだ少しの幼さが残る顔立ち。


…こんな子が暗部だなんて。
さっきとは、まるで別人だ


『3代目、この方が私と似てるって言った方ですよね?じゃあ先輩だ、カカシ先輩!!』



「あの〜3代目、その…どういう…?」




「すまんすまん、説明が遅れたの。
梓は木ノ葉の忍じゃが、訳あってここを離れておってのう…上忍じゃが、いきなり見知らぬ上忍が里にいれば怪しく思う者もおるじゃろう」



「はあ…」




「それ故、今は裏で任務をこなしてもらっておった。梓は暗部上がりの上忍でのう…そこで、経緯の似たお主にも力を借りたいのじゃ。」



「…では、俺は彼女をサポートすれば?」



「それもあるが…今日から少しずつ暗部としてでなく上忍として、打って付けの任務があってのう、2人にしかできない事じゃ。それを頼みたい。」



『ペアで、私達じゃないと出来ない任務…Bランクだからそこそこのものですよね。何です?』



「うむ。簡単に言ってしまえば、捜索及び潜入任務じゃが…少々特殊でのう」



『特殊…?』



「それは、どういった…?」



「それがのう、」




…火影様が言うには、里の蔵が荒らされ、中身を取られたらしい。

蔵には2人特別上忍の見張りがいたが、2人とも気絶させられていて、蔵の中身は丸ごと無くなっていたと…ここまではごく普通の物品の奪還任務。

だが、荒らされた蔵の中には小さな紙が散乱していて、その紙には何十もの忍でない里の住人の顔と名前。

まるで、いつでも殺せるという予告だ


そして更に、見張り達に使ったと思われる千本やクナイなどの忍具。
探せとでも言いたげに残されたものの数々が蔵には残されていたという


なるほど、悪質だな…



「梓、カカシ。お前達にはこの手掛かりを元に蔵を荒らしたものを探して欲しい。ただ…」



『…待ち伏せの可能性が高いから気をつけろ!…と?』




「…その通りじゃ」




「確かに…上忍1人では荷が重いですね」



特別上忍2人が同時にやられ、蔵の荒らされた時を調べた手際の良さからも、相手は1人2人ではない上に、まるで木ノ葉に対する挑戦状ともとれる行動

下手すればAランク任務だ



『分かりました、任せてください。カカシ先輩、頑張りましょうね!』



「…ああ」



随分と余裕な顔の梓。
目をキラキラさせてこちらを見ているが…

…あんまり期待しないでちょーだい。

とは口には出さずに、3代目から袋に入った蔵に残された忍具を受け取る。



「では2人とも、頼んだぞ。それでは…散!!」




『「はい」』



そして、俺達は任務に向かった。



-----




「とりあえずは…だいたいの場所を掴まないとだね」



『そうですね…』



とりあえず木ノ葉の門まで場所を移した。

火影様からは場所の情報が一切なかった。
梓がどんな術を持っているのかは分からないが、捜索で俺が呼ばれるという事は、…そういう事だろう。


そして、印を組み


「口寄せの術!!」



『おぉっ!』



関心している梓をよそに、捜索用の忍犬を口寄せした。


「なんじゃカカシ、用か?」



「用があるから呼んでんでショ、パックン」



『わぁーワンちゃん!』



「おい娘、拙者を可愛いワンちゃんとか言うんじゃ、…!お前、このニオイは…」



『!(可愛いって言ったっけ…)
ゴメンよワンちゃん、あんまし説明出来ないんだけど…初めまして梓です、今日はよろしくね』


「…おう、」


少しパックンの様子がおかしくなった時、なぜだか梓が焦った。…なんだ?



「パックン、この忍具のニオイの元を知りたいんだけど。
…大丈夫?」



「あ、ああ…問題ない」



『頼んだよ、パックンくん!』



「"くん"はいらんぞ、姫」



『わかったから姫とか呼ばない』



「(姫…?)」



コイツら、初対面(?)だよな…

不思議に思いつつあったが、その間にパックンが忍具のニオイを嗅ぎだす。



「うむ…ずいぶん遠くから感じるにゃあ感じるが…こりゃ難しいな」



「!そうか…昨日の雨でニオイが削ぎ落とされて…」


なるほど…新手の挑発だな。あの忍具…ニオイで後を追う捜索用の忍犬の特徴をずいぶんとわかっている

わざわざ雨の日を狙って襲い、役立たずな手掛かりを残して消えるとはな

このままだと捜索がだいぶ長引く…


『パックン、ちょっとこっちおいで』



「なんじゃ、姫?」


バチッ!!



『姫言わない。…これでどうかな?分かる?』



「(クンクン、)っ!

…ここから南南東じゃな。かなり遠いが」



!?なんだ…

梓の手からパックンに電撃のように流されたチャクラ。
それを浴びたパックンの嗅覚が上がった…?

妙な術を持ってる…

この子は、出会ってまだ少しだが、不思議な事ばかりだ…



「今パックン何をしたんだ?梓」


『ちょいっと力添えを…ね!かなり遠い…んじゃ、方角がわかったら行きますか

口寄せ、八咫烏(ヤタガラス)!!』


ボフンッ!!!



「!印動作無しで…口寄せを…?」



「やはり間違いないな。拙者も初めてお目にかかる。流石は、"獣の王"…血は伊達ではないようじゃな」






「よう梓…久々のお呼びだしじゃねーか、あん?てかコイツ誰、あとちゃっちい犬」


神々しく輝く、美しい大烏。
並の人間では呼び出せない膨大な力を感じた。



『コラ焔(ホムラ)、そんな事言うんじゃない。この人はカカシ先輩、あと任務を手伝ってくれるパックン。
ゴメンね、ちょっと色々あって。また今度説明するからさ、とりあえず今から私達を運んでもらえる?』



「へいへい、必ずだからな…

おいそこの人間と犬。早く乗れよ、ちゃっちゃと行くぜ」



『カカシ先輩、パックン早く早く!』




「…ああ、」




本当、今日は驚かされっぱなしだな…




そして、俺達は梓の口寄せに乗り目的地へ向け飛び立った。








end

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