追走

□04
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「…そうか、その戦争であの傷を…」



『…はい。でも、処置していただいたおかげで今は元気です!』



「そうか、それは良かった」




火影様はニッコリしながらうんうん、と頷く

出会った時に私が傷だらけだった理由も前の世界での木ノ葉の事も、話せる事は全て火影様に話した。
終始黙って、真剣に聞いてくれた




「では梓…この木ノ葉の忍となるにあたって最後の質問をするぞ。梓は以前、どの階級じゃったか教えてもらえるかな?」



『はい。上忍でした。その前は…暗部です』



「!!なんと…暗部!」



『…意外でしたか?』



「あぁ…雲外鏡を扱うのだから上忍程だとは思っていたがのう、暗部とは…すまんが、確かに意外じゃった」



『で、ですよね〜…』


暗部…特別暗殺部隊。
上忍だった頃より、私には暗部時代のがよっぽど長かった。

私のこのテンションだ、火影様には意外だったかもしれない



「梓に似た上忍が木ノ葉にはおってのう…暗部上がりの上忍も珍しい事ではない、その実力あってこそじゃ。…そこでなのじゃが、よいか梓?」



『!えぇ、なんでしょう』



「キミはまだ木ノ葉の皆と面識は無い…キミのように里に入るものは今までにおらん…例外じゃ。警戒する者もおるじゃろう」



『そう、ですね…』



「そこでじゃ。キミの実力を図り、里に溶け込むまでの事も兼ねて…しばらくは里の中心部から一歩距離を置いて、暗部の仕事に専念してもらえるかの?」



『はい…構いません』



「よろしい。少々酷じゃが…分かってほしい。住む場所等はワシが手配しよう。数日は梓も体を休めるべきじゃ…今日は服や忍具などを見ておくといいぞ」



『火影様…ありがとうございます』



しばらくは里から距離を置かなくてはならない

確かに、当然といえは当然

階級が上になるにつれ数は少ないから、上忍ともなると目立ち過ぎる(しかも今まで見たことのないやつ

暗部の仕事はここ数年やってないけど…住むとこを確保してくれるのはとってもありがたい


「では…梓、キミの暗部名を…教えてもらえるかね?」



『はい…躑躅(ツツジ)、です』



前から名乗っていた暗部名…所謂任務上の偽名。また使う事になるとは思わなかったな


「分かった。では、今日は下がって良いぞ。里を少し見て回れ」


『はい!』



しばらくは体を休める休暇がもらえるらしい。
数日だけ、木ノ葉病院の一室にお世話になる事になった
部屋が手配出来次第、私のここでの新しいスタートが始まる。
暗部にもなれば、その任務1つひとつ命掛けで、里を守る大事な任務だ

…頑張ろう

そう静かに決意し、火影様の部屋を出て里へと繰り出した。



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『あわわ…火影様、いきなり100両くれちゃったけどどうしよ…あ、忍具のお店…取り敢えずここか!』


ガラッと入ると可愛い女の子がいらっしゃいませーと声をかけてくれた。


職業病というやつか、丸腰だとどうも落ち着かなくて棚に並ぶ忍具を手辺り次第ガッサガッサと手に取る。
クナイ、手裏剣、起爆札、煙玉、ワイヤー、口寄せの術式を書く巻物…

お会計にドサッと出したら着物姿でTHE・村人な私に可愛い女の子はちょっと驚いているようだった


だいぶ忍具がかさばる為女の子に筆を借りて店のすみっこで口寄せ用の巻物にちゃっちゃと術式を書いて買ったばかりの大量の忍具を封印し、着物の懐にしまい込んで筆を返し店を出た


『さーて、次は服かなぁ。…?』



少し向こうで聞こえる、小さな子の攻め立てる声。

…何かあったのかな?

ちょっとだけ歩くスピードを上げて声のする方へ行く。すると…



「こっち来んな、バケモノ!!」



「そうだ、死ねっ!!」



『!!

――ッ何してるの!!』


一瞬、だけ。
自分が言われているような錯覚がした。

すぐに我に返って、男の子達の方へ走る


金髪の男の子。
その前には罵声を浴びせる3人のいじめっ子達


いじめっ子達は金髪の男の子に石を投げていた

それを、男の子に当たる前にパシッと受け止め、その子を背にいじめっ子に立ちはだかった。

良い歳して、と思うかもしれない

でも、これは単なるいじめじゃない、と直感した



「な、なんだよオマエ!」



「そいつの仲間かよ、どけよ!」



「そうだそうだ!!」



『…退くのはそっちよ、弱虫くん達』



「!!なっ…」



後ろから、男の子の驚く声。
目の前のいじめっ子達も、驚いているようだった


『寄って集って、何してるの?1人じゃ何も出来ないのね』



「う、うるさい!!…だってソイツ、」


「!しーっ、それ言っちゃダメだってママが」



『この子が、何?キミ達に何かしたの、ん?』



「くそっ、オマエもソイツの仲間なんだろ!?」


「やっちまえ!」


「いなくなれ!」



『…早くもこんなとこで使う事になるとはなあ』



スッと人差し指と中指を構える
そして瞬時に先ほど買った忍具が姿を表す


男の子の足元に木と木で張ったワイヤー。
こっちに走ってきた男の子達は綺麗に転び、目の前にズダダダッと手裏剣を出現させる

男の子達は恐怖でぷるぷる震え泣きべそをかき始めた


『ああー手が滑っちゃった、ゴメン。…次は、当たっちゃうかもなぁー…?』


そう言うと、カタカタ怯えながらなんとか立ち上がり、覚えてろよ!なんてありきたりなセリフを言って3人ともどこかへ走っていった。


…すごく大人気ない、と思う。

けど、不思議と後悔はしてなかった。



『大丈夫?』



「…え、うん…。」



スッと差し出した手。男の子は一瞬ビクッとしたけど、少しして手を取り立ち上がった。



「…今、アイツらに何したんだってばよ?」



『ん、アレ?まぁ…イタズラ、かな?』



「ふぅん…」



男の子は、そう言うと再び目を伏せてしまった。



『…バケモノ』



「!!」



『…て、何アレ?なんで?』



「…知らねえの?」



『うん、なーんも』



…やっぱり。
この子、絶対何かある、



「オレってば…体ん中に、バケモノ飼ってんだ」



…体の中に、バケモノ…か。
言い方的にきっと…何かしらのきっかけで発動する変化術を仕込まれたか、封印で第三者から力の強い口寄せ動物か何かを入れられたか。
里の子、その親まで恐れるような存在となると…或いは、伝承に聞く、尾獣か。そんな所かな



『…それで、あの子達あんな事言ってたのね…

なーんだ、じゃあ私と一緒じゃん!』



「…っ、!!?」



バケモノ、
私は、昔何度もそう言われてきた。

鬼の一族、バケモノを操る、バケモノだと。

この子も、きっと同じ目にあってきたんだ



自分の存在理由が分からない

なんで生きているのかも分からない

どうして孤独なのかも


ずっと、考えてきた筈だ、今この時も。



『…私もね、飼ってるんだ、バケモノをさ。飼ってるというか…操れる。それも里を落としかねないくらいのね』



「…そう…なの…?」



『うん。…私は梓。キミ、名前は?』



「…ナルト。うずまき、ナルト」




『…分かった。
ナルト、キミは私にすっごく似てる』



「オレ、が?」



『そう。…あのねナルト、キミは何も悪くない。里の人が間違ってる。だから、胸張ってもいいの』




「え…」



『里のみんなに、ナルトの存在を認めさせてやればいい!』



「オレの、存在…?」



『そ!誰にも文句言わせないように。バケモノなんか関係なく、自分を好きになってもらう、努力をさ
私も、そうやって出来たんだ。大切な人が』



「大切な人…」




『そう。1人いるだけで、何も怖くなくなるんだよ。だからさ…


ナルト、今日から私の弟になりなさい!』


私を支えてくれた、友達、…恋人。

頼れる人が傍にいる、それだけで人生は大きく変わった

ナルト…この子は、誰にも頼れずに、理不尽な拒絶に苦しんできた

だから、私が。
まだ闇の中にいるこの子の、光になりたいと思った


…アナタが、私にそうしてくれたように。
ちょっとだけ、強引だけど



「えぇ…!?お、弟って、どういう事だってば」



『そのまんま!血なんて繋がってなくてもいーの!梓ねーちゃんと呼びなさい』



「梓、ねーちゃん…?」




『うむ、よろしい!』



こうして、私に守りたいものがまたひとつ、できたのでした




ナルトとの出会いも、またアナタに近付く一歩だったとは



まだ知らなかった










end



締めが毎回てきとーですね(笑)

メインのあの人いつ出せんだろ(-.-;)

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