追走

□03
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『ふぁ〜…よく寝たあ』



この世界へ来て、この世界の火影様と会って、初めての朝。

体はまだ怠いし痛むところもあるけど、戦争真っ最中より全然マシだ



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『あの、火影様…』



「ん、どうしたのじゃ?お嬢さん。おぉそうじゃ、ワシにもう一度名前をお聞かせ願えますかな?」



『はい…梓、と申します』



「そうかそうか!良い名じゃな。それで、どうしたのかね?」


『あの…私客観的にみたらかなり怪しいと思うんですけど…自分で言うのも何ですが不振人物だし、本当にこんな簡単に里に入っちゃって良いのでしょうか…』



「クククっ…なかなかおもしろい事を言うのう梓。大丈夫じゃ、キミが里に害をなす者だとは思っとらん」



『でも…』



「根拠はきちんとあるぞ?じゃが、話をする前に一見してもキミは傷だらけじゃ。…辛い事もあったのじゃろう?とりあえず部屋を用意させる、そこで今日はゆっくり休むがよい」



『…はい、ありがとうございます…火影様』



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火影様が気を使ってくれたお陰で、体はだいぶ楽だ。
軽い処置はされているのか、傷もほぼ治りかけだ


だけど、この傷を見ると実感する。


あの戦争を、


そして私を守って散ってしまった大切な命を。



何気なく髪を梳けば、肩までしかないそれ。



不意に懐にいつも忍ばせているネックレスを取り出す。ロケットになっていて、中にはボケボケの影の誰かと、私。
2人で並んだ写真


きっとそこには愛しい人の顔が写っていたけど、記憶と一緒にどこかへ飛んじゃったのかな…

大切な宝物



写真の中の私の髪は腰まで届いている



…今度こそは、絶対守る。
来世なんかじゃなくて、私の知る世界のアナタを作ったであろうアナタを。


挫けてばっかじゃいられないな…



そう思ってベッドから起き上がると、すぐ横に着替えが置いてあった。


そばのテーブルには「目が覚めたら食べておくのだぞ」と言う言葉に火影様の部屋への地図の書かれた置き手紙と、水といくつかのおにぎり。


目蓋に滲んだ涙は知らないフリをして、ごはんをありがたく頂戴した


簡素な着物に着替えそして、足早に火影様の元へと向かった



コンコン、




『梓です。火影様、いらっしゃいますか?』



「おぉ、梓か!
入りなさい」




『火影様、食事と着替え…わざわざありがとうございました』



「はは、構わんよ。それより梓、キミは3日間眠りっぱなしだったのじゃぞ?」



『ええっ!?そんなにですか!?』




「目覚めないのではないかと心配しておっての、無事でなによりじゃ」



…3日も眠りっぱなしだったのか…

あのおにぎり3日たってる味じゃ無かったしな…目が覚めない間もずっと用意させてくれてたんだ



『…申し訳ありません…』




「なに、気にするでない。…さて、本題へ参ろうかの」



『!はい』




「梓…キミが口寄せしていた鏡…雲外鏡で、間違いないのじゃな?」



『えぇ…ですが、雲外鏡が何か…?』




「キミは木ノ葉隠れの忍びと言うたが…もしかしたらキミは、別の時間から来た木ノ葉の忍じゃないかの?」



『!!…はい…雲外鏡の能力を、ご存知で?』



「ああ…伝承に伝わる有名かつ強力で異質な口寄せ動物じゃ、知っておる。じゃがまさか目の当たりにするとは思っておらんかったがの」




『はは…確かに雲外鏡は特殊ですからね』




「雲外鏡だけではない…それを口寄せできる梓…キミ自身もじゃ。雲外鏡を口寄せできる者…梓、キミは"獣の王"の一族、口寄ノ里の者で間違いないか?」



『獣の王…?それはちょっと聞いた事が無いですが…確かに口寄ノ里は私の生まれた場所です』




「やはりか…」




『はい…でも、そこでの事はあまり覚えていません。両親の事さえも分からない…あの場所での私は、戦いしか知らなかった』




「…そうか…すまぬ事を聞いてしもうたの」



『いえ、いいんです!火影様はお気になさらないでください。でも、口寄ノ里がどうかなさったのですか…?』



「…ワシがキミと会った時、雲外鏡と言う言葉に聞き覚えがあってな。口寄ノ里は小規模ながら、全ての口寄せ動物達の根源の場所とされていることと…忍犬、忍鳥、忍蝦蟇、様々な口寄せ動物の中でその一族の血でしか呼び出せない特有な口寄せ動物が存在しているのを知っておった。その中の1つが雲外鏡…それで、梓…キミがその一族だと踏んだのじゃよ」



『…なるほど…この世界でも、一族は存在していたんですね…。』




「口寄ノ里と木ノ葉は密接な関係にあったと伝承にもある。口寄せ動物は忍の忍術の中でも特殊ながら中心的なものの1つじゃ。当然、口寄ノ里に起きた悲劇も知っておる」



『…』





口寄ノ里。

名の通り口寄せの術や動物の大元の里だった。


口寄せのスペシャリストで、口寄せ動物も、術式を持ち歩いていれば武器をも瞬時に呼び出せる上、里の者は"強さ"によって全ての口寄せ動物の主人…"王"となれる素質と資格、血持つ血継限界の一族


たとえ相手の口寄せ動物でも力量次第で命令を聞かせる事が出来、命令権は自分のものとできる

小さな隠れ里だったが、忍五大国の忍達よりも遥かに上の実力を持ち合わせた最強の一族だった


…そう、1人ひとりなら。


その圧倒的な強さで口寄せ動物を負かし、認めさせる"絆"による契約は…殺されるとその者が会得した動物の口寄せの権利を丸ごと奪われてしまう


ある日起きた悲劇。

五大国が口寄せ動物欲しさに協定を組み、口寄ノ里に襲いかかったのだ。

里の者は強く何人も打ち負かしたが、五大国の数に任され滅びてしまった


"火影"という名がまだ無いころの長は、口寄ノ里と友好な関係を築いていたが、その長亡き後の長は、里の発展の為にその作戦に乗じていた


口寄せ動物が里から出回って多くの忍が口寄せの術を使えるのは、昔口寄せ動物を欲した多くの忍が里の者権利を奪い子孫や弟子へと残っていった為であるという



「…木ノ葉は恨まれても仕方の無い事をした。それでもキミは木ノ葉に身を置きたいのかね…?」



『…その過去は、私のいた世界でも此処でも変わる事はありません。確かに木ノ葉もやった事…でも、あなたがやったワケじゃない それに、』



「それに?」




『…私の一番大切な人が愛し、守った里です。私も、全力で守りたい』

「…そうか」



あの戦争。
たった一回のそれで、大切なもの全てを失った


友達だっていたし、アナタと行った様々な思い出の場所だって、全て


…だけど、今度こそ。



「…うむ!よろしい。キミは正式に、"この"木ノ葉の里の家族じゃ!」



『本当に…私をここに置いて下さるのですか?』




「構わんよ。キミの言葉には嘘偽りを全く感じない。それに、雲外鏡は伝承にはこう書いておる。
"心ニ曇リ在ル者口寄セスル事能ワズ"…
疚しい心を持つ者は、呼び出せぬ存在じゃ」



『火影様…』




「案ずるな、梓…キミの居場所はここじゃ」




『ッ…ありがとうございます…!!』





…きっと、アナタはこの場所にいると信じてる


もし非力な村人なら害を成す輩からアナタを守るし、木ノ葉の敵であったとしてもアナタの楯になる



絶対見つけ出さなくちゃ





アナタと、アナタの愛した木ノ葉の里



今度は必ず守ってみせる









end




一回半分くらい文章が消えてしまった…orz

最初に書いたやつのだいぶ違う占めになっちゃったなあ(汗


申し訳ないです(-.-;)

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