追走

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「…、…!!」




体中、痛い。
頭もぼんやりするし…

それに、すごく眠い…



「…い、…ッ!」




…?うるさいな…誰?

私今疲れて…




「梓ッ!!!!」


『…ッ!!!
ほああぁあああー!?』



「ようやく起きたか、全く…心配かけさせおって」




『む、霧雹…?
…こ、ここは…』




「うむ、恐らくここが主の望んだ世界だ。成功じゃよ」



『私の、望んだ…?、ッうぅ…!!』



「!どうした…!?」




私の望んだ世界。

何を望んだのかは、わかってる


でも


『…わからないの』



「…?」




『私は、誰を…?』



思い出そうと自分の記憶を辿っても、それを拒むように頭が痛くなる。その知りたい部分だけがスッポリ抜けているというか、穴があいてしまっているような感覚。


私の大切な人の為に雲外鏡に頼んで来たのは、わかる


けど、その大切な人の名前、顔、ぼんやりと浮かんでも、すぐに消えてしまう




「…忘れてしもうたのか」



『…恋人を追いかけて、来たのはわかってるの。でも、はっきりと頭に浮かんでこない』




「仕方があるまい、生きているだけでも奇跡じゃ。時間や空間を跨いでおるのだから、最悪御主が歳をくったり手足が千切れると思っておったからのう」



『ハハハ…笑えない』



自分の経歴、名前、覚えた術、全て分かるのに、一番忘れてはいけない大切な人の事が、思い出せない



「私は、覚えておるぞ?」




『…ダメ。自分で見付けないと、意味がない
それに、』



…ただ、1つを除いて。



『…声、はね…覚えてるの』



「声…とな?」


頭に残る低くて、ぶっきらぼうだけど、優しい声

それだけ、だけど私にはきっととても意味のある記憶だったんだ



『うん。

長い髪が、似合うって…

お前と見る雲が、一番好きなんだ、って…
それだけは、ハッキリ分かるの』



「…左様か」




『…大丈夫、ゆっくりで構わない。見付けて、影ながらでもいいから、今度こそ絶対に守る。命をかけて』



この世界に、きっといるんだ。私を守って、命を落としてでも私の幸せを願ってくれた大切な人が。


…探さなくちゃ



「して、どうやって探すつもりじゃ?」




『ん?もちろん頑張るよ』




「…」




『え、なになに?霧雹、顔無いけどなんか凄いコワい、なに?!』



「私はこの世界へ来る前から御主に何か策があるのだとばかり思っておったぞ!」



『えっ、思い付きだもん、んなもんあるワケないじゃん!!逆にどうやって探すのさ!』




「私が聞きたいわ!!」




『…?…!!霧雹、ちょっと待って』




霧雹と言い争っている間に微かに感じた人の気配


霧雹も一拍遅れたもののすぐ気付いたようで、気配の方向にユラリと浮き、私を背に気配の元を見据える




「貴様、何者だ!!」


「我々の里に何か用か!」




『!…あの額当ては』





「…木ノ葉の忍、じゃな
それに、あの後ろの」


『…うん』




見ると、護衛の忍らしき2人の男の後ろに、見覚えのある赤と白の笠

…この世界の、火影のようだ


どうやら、他の国へ出掛けた火影が里へ帰る途中らしい


確かに、後ろを見れば少し雰囲気に見覚えのある里門が見えた



なるほど、里へ向かう不審な人物に見えるのは当然かな…




「おい、聞いているのか、女!!」




『…私は怪しい者ではありません。名前は梓と申します。正真正銘の木ノ葉の忍です
ですが少々ワケ有りなのでして…話を聞いては頂けませんか』




「お前のような忍は木ノ葉にはいない!木ノ葉の忍を装い何か企てがあるのだろう!?」



「…待つのじゃ。2人とも下がりなさい」



「!し、しかし…」



「火影様!!」





「…やはり火影だったようじゃな」



『みたいだね』



唯一私が木ノ葉の忍である事を証明できる額当てを忍達に見せてもやはり偽装しただの木ノ葉の忍を襲って奪っただのの疑いが大いにあるのか護衛の2人はあからさまに私達を敵視していた


でも、火影と見られる人が2人を諫めると、ゆっくりと此方へ歩いてきた




「心配するでない、ワシはキミを傷付けたりせんよ」



『…!』




「1つ気になったのじゃが…
…そちらの口寄せ
雲外鏡殿とお見受けしますが…如何かの?」




「如何にも。私をご存知かな?」


「もちろんですとも!お目にかかれて光栄ですぞ

さて…口寄せ、雲外鏡…これは一癖ありそうじゃな。そこのお嬢さん、ワシについて来てもらえますかな?ゆっくり話を聞かせてもらいたいのじゃ」



『…はい。ありがとうございます、火影様』



「火影様!!」




「気にするでない。大丈夫じゃ」




忍達が、"いかにもアヤシイ"私達を里へ入れるのを言葉には出さないが拒んだ


だが、火影様はどうやら雲外鏡を見て何かを確信したらしく、私はひとまず雲外鏡を引っ込めて、火影様の屋敷へ向かった



これが、私の大切な人を見付ける為の、大きな一歩となる。









end

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