自由ノートに落書きした
□安らぎの場所はすぐ傍に
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─さあ、お仕置きの時間だ。
嫌・・・
─欲しいんでしょ、この牙が。
望んでない・・・。
─嫌とか言いなが、気持ちよくてたまんないだろ?
やだ・・・やめて・・・いやぁ。
─もういっそ溺れてしまいなさい。
「いやっ!!」
目を開けた先に見えるのは薄暗い天井。周りを見回しても誰かがいた形跡もない。
あれは夢?
それにしても現実味があった。
ここ最近他の人に血を吸われているからかな・・・。
吸血はとにかく怖い。痛みが怖い。快感が怖い。何より自分を失うのが怖い。それでも彼らは隙あらば私の血を求め、私の血を独占しようとする。
もちろん彼らと出会ったときに誰も選べず返答を保留しているから、襲われても文句も言えない。しかし、最近は吸血行為がエスカレートして安心して眠れない。この夢らしいものだって何度目だろう。とにかく、この状況を何とかしないと自分の身体が壊れてしまう。
「少し外に出ようかな。」
私は逃げるように外に出た。
外に出ると、朝日が昇りはじめていた。朝日を見るのが久しぶりだと思うともう戻れないのかな、と不安に思う。このまま、自分が自分じゃなくなるのかな・・・。
「おい。」
急に声をかけられてビクッとした。振り返ると、スバルくんがいた。
「あ、スバルくん。どうしたの、こんな朝早くに?」
「お前こそ」
「私はちょっと・・・眠れなくて、」
それきり会話は続かなかった。長い沈黙が流れる。私もスバルくんも眼前の朝日を見ていた。そういえば、スバルくんの隣は自然といられる。なんでだろう。彼のとなりは安心感のようなものがある。
「・・・お前、気づいてないのか。」
驚いたかのような表情をした彼がふと私に聞いてきた。
「なにが?」
「お前に夢魔が憑いている。」
「え・・・むまって」
「悪夢を見せる悪魔だ。」
本当に?
「どうせ悪い夢でも見たんだろ。それでここにきた。」
言いあてられて驚いた。
「図星か。まぁどうでもいいけどな。それより・・・」
言葉を切ると、私の体は無理やり、しかしふわりと草原の上に倒れた。
「スバルくん!?」
彼ににっと笑って、
「夢魔がいるなんて気にくわないからな…祓ってやる。」
と言って夢魔がいる(らしい)ポイントに牙をたてた。
「あ、・・・ぁ、んっ。」
痛みと快楽が押し寄せてくる。噛まれたところがジンジンする。熱い何かがこみ上げて、頭を真っ白にする。
でもあらがいたいとは思わない。
他の人なら嫌なのに、なんで?
スバルくんだって私にとっては怖い人のはずなのに・・。
柔らかく押し倒したから?
時折するキスが優しいから?
それとも・・・私が彼を・・・
「おい。」
その一言で我に帰る。
気がつけば上にいたスバルくんは私の隣で寝転がっていた。
「何度も声かけたのにそんなに良かったのか。」
一気に頬が紅潮する。
「そんなわけじゃ・・・」
ないとはいえなかった。
スバルくんはぐいっと私を抱き寄せ、腕の中に閉じこめる。その腕は優しく、身体は冷たいのに暖かかった。
「また夢魔が憑くなんて許さねえ。だから今日は一緒に寝てやる。」
私の口から「ありがとう。」と言葉がでてきた。
表情は分からなかったけど、ほんの少し上擦った声で、
「マズくなるのはイヤなだけだ。」
と返ってきた。
end