頂き物《小説》
□もしやり直せるなら
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それは遡ること数日前。
既に神楽と新八を人質にとられたのとほぼ同じ状態だった俺は、二人を護るために、その攘夷志士のグループのリーダーから課せられる無理難題を、次々とこなしていた。
「銀色侍さん。」
ニッコリと貼り付けたような笑顔が特徴的なリーダーが俺に話しかけてきた。
「なんだ?」
「貴方に最後の仕事をしてもらいます。これが終われば、子供達も解放して差し上げましょう。…この写真に写っている人物を殺して下さい。方法は問いません。」
そう言ったリーダーから手渡された写真に写っていた人物は…
「!!!」
俺の愛しい恋人―真選組副長・土方十四郎だった。
「出来ますか?…ああ、そういえば貴方にはほとんど拒否権はありませんでしたね。」
コイツはいつもいちいち人の神経を逆撫でするような発言ばかりする。しかし、今の俺はコイツの言うことにはたしかに逆らえない。
「そうだ。…んな分かりきったこと訊くなって。…これで、最後、なんだよな?」
念のため、訊いた。
「ええ、最後です。」
「………分かった。」
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そして今日。
俺は土方を桜の木の下―俺が土方に告白した場所―に呼び出した。
初めがここなら…終わりもここにしよう。
そう思った。
「一体なんだ?急にこんな所に呼び出して…。」
不審に思ったのか、そう俺に問う土方。
そりゃ当然だよな。屯所と万事屋と飲み屋以外で会ったこと、ほとんどないから。
「ごめん、ごめんな土方…」
そう言って俺は、アイツ(長)から渡された、実弾入りの拳銃を、目の前に立つお前―土方に向けた。
「!…。」
恋人―俺から銃を突き付けられたにも関わらず、土方は少し驚いたものの、冷静な表情をしている。
「それはつまり…俺を殺す、ってことか?」
「ああ。」
「そうか…やっぱりな。」
「え?」
やっぱり、という言葉に俺は驚いた。
「まさか、知ってたのか?」
「いや、ただお前が最近屯所に来なくなって、たまたま巡察で会う時も様子が変だなと思っただけだ。」
俺は土方にそこまで気付かれていたことに対して、自分を嘲笑った。
そして…ここに来て自分の決心が揺らぎ始めていることに気が付いた。
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