【銀色小話】

□ホワイトデー
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「やっと起きたか。朝メシ出来てんぞ。大盛? しょうがねぇなぁ…」


「よぉ、飲みに来てやったぞ〜。…え? ドンペリ? ちょっ、待て待て! 俺ァ、金そんな持って…身ぐるみ剥ぐ? え、これ、ズンボラ星の学校指定ジャージだぞ」


「〜ッうざってェんだよ!! いつまでついて来る気だ!? うわっ、納豆クサッ! 寄んじゃねぇ、このメス豚がァァァァ!!」


「久しぶりだな。いやぁ、相変わらず吉原の女は積極的だわ。めちゃくちゃ引っ張られ…おい? 何怒って…ちょっ、何でクナイ!?」


「…あの、何かぁ、あそこに糸目ビーム発射しそうなお兄さんがいるんだけどぉ…。…え? 今日一日中あの調子? へ、へぇ〜? じゃあ、俺そろそろ…うわぁぁぁあぁぁ!! 何か光ったァァァアァ!!」


「まだお前らかぶき町にいたんだな。あん? 今日からまた他の所に行くって? ふ〜ん。真っ赤なお花真っ赤なお花ばっか言うなよ。誤解されっから。理由? 親父に訊け」


「最近調子どうだ? 廃刀令の時代だからな。客なんて来ねぇだろ? 何かあったら俺に言えよ。金以外のことなら助けてやるぜ? つか、助けて。神楽のせいで食費がヤバい」


「新聞見たぜ。め組、また活躍したらしいじゃねぇの。…この前、め組でぼや騒ぎ? 何で…はァァァ!? 親父がエロ本読んでる時の摩擦で!? おいおい、大丈夫か…いろんな意味で」


「ババア、仙望郷に電話してくれたか? 部屋空いてるって? そうか。なら、ゆっくりさせてもらおうかね」


「お前も大変だねぇ。妖怪ババアとネコ耳年増女にコキ使われてよぉ。俺がてめぇの愚痴に付き合ってやろうか? 何々……上の階のニートがずっと家賃払わな……あ、悪ぃ。用事思い出したわ。じゃっ」


「なぁ、お前って俺の式神だよな。っつーことで、お遣いを命じる。サイン貰って来い。ってぬをォォォォオオォオォォォォ?! あ、あっぶねぇなコノヤロー!! 何で俺の大事なキン○マ潰そうとすんだよ!!」



「よっ、元気か?」
「景気良さそうじゃねぇの」
「あぁ、今度店に寄らせてもらうわ」


……………………………














☆☆



「……あの、ちょっと銀さん」
「あん?」



夕暮れの景色。
世界がほのかに赤に染まるこの時間。
万事屋に帰る途中、新八はとうとう我慢出来なくなった、というような表情で銀時を見た。
いつものように魚の死んだような目を見ると、この世界に溶け込むような紅い瞳をしていた。



「何やってんですか?」
「何だよ、やぶから棒に」
「いや、だって今日ホワイトデーじゃないですか」
「まぁ、そうだな」
「……チョコのお礼しに行ったんじゃないんですか?」




今日銀時が出掛けるとか言うから、きっとそうなんだと思ってついて行ったのに。
銀時がどんな言葉を女性達に贈るのかに興味があったから。
しかし、今日一日費やしてやったことと言えばバレンタインにチョコレートをくれた女性達のもとに行って、少し喋るだけ。
見ていたが、何かを贈っていたり特別な言葉を言っている様子はなかった。
ただ、世間話をしているだけ。
それを聞いて、銀時は肩をすくめた。





「何言ってんだ、ぱっつぁんよ。ちゃんと礼ならしただろうが」
「え、いつの間に?!」





全然気付かなかった、と驚く新八。
と同時に、やっぱり人間としての常識はあったんだと安心した。

しかし銀時は。
何言ってんだ、とでも言うかのように片眉を上げて。













「『俺が訪ねて来て喋れた』。これが一番の贈り物だろ?」














「………もう、良いです」






新八は諦めたように、呟いた。










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