【銀色小話】

□護る
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城の上では、未だ黒煙が立ち昇り続けている。
定々の舟やら何やらが炎上しているのだ。



『侍の国にござる』

天導衆は将軍徳川茂茂のその言葉に特に何も言わず、舟へと戻って行った。
心の中で何を思っているのかは、知らないが。

その舟の姿が見えなくなると、真撰組隊士と見廻組隊士が、呆然と目を虚ろにしている定々を牢へと連れて行った。
茂茂もその場を去って行った。
ここは頼む、すまない、と告げて。




「ったく…本当にやっちまうとはな」


土方は煙草の煙を漂わせながら目の前の惨状を見た。
どこもかしこもボロボロだ。
舟の中でもおびただしい量の者たちが息絶えているらしい。

屋根に目線を移すと、瓦が所々砕け散っている。
こんな所で、戦ったのか。
あの銀髪の男は。

万事屋の子供たちは落ちて行った銀時のもとへ向かった。
死んではいないだろう。
なにせ、あの坂田銀時だ。

そう考えていると、ざっ、と黒服の一人が現れた。


「ただでさえ煙たいのに、何副流煙まき散らせてんですかィ、土方コノヤロー」
「バズーカ撃ったらもっと煙たくなるぞ、総悟」
「チッ」


自然な動作でどこから取り出したのか知らないバズーカを構えた沖田は、隠しもせず盛大に舌打ちした。
土方は少し眉をピクリと動かす。


「第一、城でバズーカぶっ放そうとすんな。阿呆が」
「土方さんも将軍様の前で煙草吸うたァ、頭イカれてんじゃないですかィ」
「ンだとコルァ」
「ヤりやすかィ」


抜刀する構えの副長と一番隊隊長を、一般隊士達は困惑したように遠巻きに見ている。
そこに。


「やめんか、二人共」
「まったく…これだから凡人は。エリートをご覧なさい。エリートの動きでこの場をエリートらしく収めていっていますよ」


苦笑している真撰組局長近藤。
そして携帯をいじって、パタンと閉じた見廻組局長佐々木。
近藤の登場に二人は刀から手を離す。
そして。


「エリートエリートうるせぇ野郎だなぁ、オイ。勘違いすんなよ。俺らはお前らと手を組んだ覚えはねぇんだからよ」
「何を言っているんですか。そんな勘違い、エリートがするわけないでしょう。今回の件はエリートが真撰組を利用しただけです。ほら、よく言うでしょう。何とかとハサミは使いようって」
「馬鹿ってか? 馬鹿とハサミは使いようってか、あァんッッ!?」
「おや、よく知っていましたね。エリートびっくり」
「黙れやこのヤロォォォォォォォォ!!」
「ストップ!! トシストップぅぅ!!」


淡々とした佐々木の言葉に、とうとう堪忍袋の緒がはち切れた土方。
抜刀しかかった土方を、近藤は慌てて抑え込む。


「まぁ、土方とハサミは使いようっつーのは分かりやすが」
「何で俺限定だ!!」
「近藤さん馬鹿にしたら許しやせんぜィ、見廻組局長さん」



にぃっ……と口の端を上げる沖田。
その瞳には、凶暴な獣の光が宿っていた。
佐々木は、ふぅ、といつもの無表情で息をはく。


「まったく…凡人には教育が行き届いてませんねぇ。これだから、エリートと凡人は相容れないんですよ」
「そりゃどうも。光栄ですねィ」


嫌味の応酬。
静かな分、土方よりも何か怖い。








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