【銀色小話】

□バレンタイン
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「銀ちゃん! これあげるアル!! 私が一番ネ!! 今から外行くんでショ? 
ならこの袋持って行った方が良いヨ。邪魔? 絶対必要になるアル。行ってらっしゃいヨ〜」


「これ……新ちゃんがいつもお世話になってるので……」


「銀さぁぁぁぁんっ!! 私の愛を受け取ってぇぇぇぇ!! やだ、放置プレイ?!
じらしてるのね?! じらしてるのね!! あぁんもうっ。私を喜ばせてどうするのよっ」


「ぎ、銀時。あ、あの、これ、地上では今日これを男にやるものだと日輪と晴太から聞いて、な。も、もらいなんし」


「銀時、いつも世話になっている。受け取ってくれ。ん? あぁ、後ろの奴は気にしないでくれ。
これは僕の手作りなんだが、その時から見守ってくれているようでな。外出するのにも鎧を着せるような過保護っぷりだからな。
まぁ、時折何かを呟いているみたいなんだが……呪いの言葉? 糸目からビーム?ふっ。相変わらず面白いことを言う」


「兄貴〜。これもらっちゃって下さ〜い。あれ、顔が真っ青ですよ〜? …あぁ、これ真っ赤なのが気になるんですね〜。
これは紅花のエキス入れてるんです〜。血行促進作用があるらしくて〜」


「……銀さん。これ…お世話に、なったから。
──違う。とぐろを巻いた龍だ。いや、確かに色が色だしそう見えなくも……ふっ、ふざけてなんかいない」


「よぉ、銀さん!! これやるよ!恋の炎燃え上がってるか? 
そんな時は俺に言ってくれよな。め組総出で消しに行くからさ! 
ん? 消すなって? ははっ、そりゃそうだな!」


「銀時、これ。…馬鹿言うんじゃないよ。家賃も払わん奴になんでアタシがやらなきゃならないんだい。
これ、送られて来たんだよ。仙望郷からの……いや、ババァじゃなくて、何か娘かららしいよ」


『銀時様。これを今日あげると男共は調子に乗って、来月すごいモノをくれると聞きました。
せっかくデータに入れたので私も……間違ってる? そうなのですか。
キャサリン様がおっしゃっていたのですが』


「銀時様。これを渡してくれと……何興奮してるでやんすか。
ちなみに手作りだそうですよ。知ってますか。
陰陽師の手料理って、何かしらある…あぁ、そういえば美味しそうなモノを入れてやしたね。
あっしら式神にとって、ですが。……冗談ですよ」



「銀さん!」
「銀時!」
「銀時さん!」


……………………












☆☆





「うわぁ……」



万事屋銀ちゃん。
夕暮れ時に帰ってきたオーナーを見て、
従業員兼雑用兼ツッコミの志村新八が声を出した。
それは呆れているような、うらやましがっているような、
若干引いているような声色だった。



「おぉ、ぱっつぁん〜。ちょっ、これ少し持ってくれ」
「また……沢山もらいましたねぇ…」




銀時から手渡されたのは、綺麗な包装紙に包まれた多くの箱が入った袋。
ピンクに黄色に赤に青。
ドットにストライプに無地。
四角に円にハート型。
様々な想いが詰まったもの。


銀時と新八はどしゃぁぁっ、と机の上にソレをひろげた。
机いっぱいいっぱいで、数個落ちそうになっている。



「いやぁ、何かめっちゃくれたんだけど。
チョコレート」




如月十四日。
今日は世に言う『バレンタイン』だ。
行く先々でチョコレートを渡された銀時は、糖分摂取〜、とご機嫌だ。





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