【夜桜日記】

□第三章
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「どんだけのモンを背負ってるか…想像を絶しまさァ…」

戦争の象徴。
弱さを見せたら一気に崩れる。
沖田は真撰組一番隊隊長だ。
一番若かろうが絶対に弱さは見せない。
仲間を失うから。

沖田でさえこんなに責任があるのだ。
一つの戦争の象徴、要となっている『あの方』。

「危うい雰囲気漂わせるのも無理ねェや」

何にしても、夕月の想い人はどうなるのだろうか。
沖田は次の頁に目を移した。
そこには。



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何を書けば良いのか分からない。

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「…あり? これだけかィ」

ただ、一言。
一言だけしか、書かれていない。
今まで読んできた中で、こんな間が空いているのはなかった。
しかも、何を書けば良いのか分からないときた。
嫌な予感がして、沖田は変に力を入れて頁を捲った。


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先生が帰ってきた。

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そして次の一文に、沖田は固まった。







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物言わぬ、首だけが。

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「く、び…だけ、ですかィ…?」

思ったよりも掠れた声が自室に響いた。
呆然とその一文を見つめ、ハッとして次の文に目を滑らせる。
先程とは違い、ぎっしりと書いてある。
心を書きなぐるように。



**

今日、いつものとは違う敵がいた。
戦いの最中にこちらが苦心の末、ようやく相手の顔を斬りつけることが出来たが、あまりにも強い男だった。
その男が率いる者が、その男に何かの包みを渡した。
そしてその男は、それをあの方に渡してきたのだ。
その男は言った。

お前達が望み続けたものだ、と。

怪しんでいたあの方と小太と晋は、何かを悟ったのだろう。
ざっ、と青ざめてその包みを引ったくった。
それは、風呂敷のようなものに『丸い何か』が入っているようで。
そして晋がそれを開けた。
目を疑うもの、否。
予想していたものがそこにはあった。


先生の、首が。


三人の姿は、見るに堪えなかった。
一人は落涙し。
一人は狂ったように否定し。
あの方は

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頁を跨いだ文。
ぺらりと捲る。









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