【突発文&お知らせ&企画】

□☆銀時異星王族設定
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「早く…早く行きなさい、ハク…っ」


いつもの優しい表情はどこにもなく。
厳しく切羽詰まった、苦しげな表情で母は言った。

ハク。白。
息子の愛称を、口にする。
既に母の背を追い越している、輝く色の髪をした青年。

この星の、第二王子でありながら。
真実の王の証である、銀と紅を受け継いでしまった、波乱の王子。


「お袋も、早く来…っ」
「いたぞ!!」
「第二王子と第二王妃だ!!」


その声にハッとする。
第一王子の兵。
真実の王である証の銀と紅を持ったハクは、この星の次期王になることが定められていた。
だが。
ハクの異母兄である第一王子が、己が王にならんと、刃向かう全ての者の虐殺を始めたのだ。

兵が迫ってくるのを見て、母は息子を押し、小型の宇宙船に入れる。
宇宙船の入り口から、ハクは母を仰ぎ見て手を伸ばした。


「お袋も…っっ」
「ハク」


母はニコッと、精一杯微笑み。
最後になるであろう言葉を告げた。



「いつまでも、貴方を愛してる。『────』」



ハクという愛称ではなく、息子の真名を口にした母はパタン、と。
外から扉を閉めた。
その瞬間に、小型宇宙船が起動される。


「ま…っ待てよ、おい、クソッ、止まりやがれ…っっ」


扉も開かず、次々とシステムが起動されていく。
透けた窓から見える母の背中。
ハクは力一杯、扉を叩く。


「お袋…っっ母上!!」


その声が届いたのか少し口の端を優しく上げた母の微笑みが見え──しゅんっ、と宇宙船が消えた。
それを見た母は、息を吐き出し。
己を囲んでいる兵達を見回した。


「……さて、貴方達。ここは通さないわよ」


彼女はするり、と両腰から短剣よりも長く、刀よりは短い刃を抜いた。
にっ、と昔のように王妃らしくない表情で笑う。
息子の色は、彼の父のものだったけれど。
表情や仕草は、母の私のものだった。
私の息子。
いつまでも。


「宇宙船を使ってハクを追いかけたいのでしょう? 残念ね」


バァァァアアアンンッッ


爆音が相次ぐ。
次々と、宇宙船が爆破されていく。
彼女はこの惑星では珍しい黒い髪をはためかせ、慌てだす兵を見つめた。


「これで、追えなくなったわね。私? 私は逃げも諦めもしないわ。だって、息子に絶対諦めるなと教えてきたのに、私が背いちゃ意味ないじゃない」


彼女は腰を落として構える。

どうか、どうか。


「──幸せに」


そのためならこの命。
全然惜しくないんだから。

光る雫が頬を流れ落ち。
彼女は地を蹴った。


──────


黒い髪が赤き水の中に広がっている。


「……よろしかったのですか、王子」
「構わん。第二王子も他の惑星ではやっていけんさ。───これで、俺がこの惑星の頂点だ」


にっ、と黒い笑みを浮かべた第一王子を、第一王子の右腕は横目で静かに見つめた。




***


ガタッ、と扉が開き輝く色が中から出てきた。
出た瞬間、小型宇宙船は消滅した。

「は、はうえ……」

銀色は、歯を食いしばる。
しかし。
己の声が、高いことに気づいた。
よく見ると。
服は特殊な素材で出来ているから大丈夫だが、己の身体が小さくなっている。



「……時間軸が違う惑星に着いたのか」


冷静にそう分析する。
そしてふと目線を上げると、多くの人間が集まっていた。
随分と田舎のような恰好で。
現状を把握しようと、ハクは立ち上がって歩みよろうとした。



「悪い、ここは……」
「お、に……」
「は?」


「鬼だぁぁぁぁぁあああ!!」


その叫び声を皮切りに、何かが次々とぶつけられた。
飛んできたモノを、幼児とは思えぬ速さで捉えた。
それは、石。
ハクは困惑する。


「おい、なんのつもり……」


もう一度村人たちに目線を移して目を見開いた。
農具だったり、包丁だったり、刀だったりを皆手にして。
殺気を向けていた。


「待てよ、俺はただここがどこか訊きたいだけ……」

「銀色に、紅い瞳……!!」
「おめぇは、鬼だ!!」
「鬼がこの村に何しに来た!!」
「殺しに来たか!!」
「鬼は殺す!!」
「殺す!!」
「お前なんか、いなくなれぇぇぇぇぇえ!!」


『忌々しい銀と紅。弟の分際で……っ!!』
『貴方は邪魔なんですよ、第二王子』
『殺せェェェェェェエエエ!!』



あぁ、そうか。
俺はここでも。
どこにいても。
邪魔なんだな。



『逃げたり、諦めたりしちゃ駄目よ、ハク』



ギリ……と奥歯を鳴らして目の前に迫った刃を見つめて。
手を、地を、全てを、赤に染めた。
己の瞳のように。



「……悪い、な」



そう言葉を投げかける。
聞いているモノは、もういない。





───逃げるわけには、いかないんだ。





ぐっ、と唇を噛んで天を仰いだ。






☆☆



「戻ってきて、くださいますよね、王子」
「…はっ。ここまでしておいて、よく言うなぁオイ」


「銀時!! 貴様、そちらを選ぶのか!! 俺達に…先生に言っていたあの言葉は、嘘だったのか!?」
「銀ちゃん、私達なら大丈夫ヨ!! だから……」
「行かないで下さい、銀さん!!」

沢山の仲間が名を呼ぶ。
銀時は息を吐いて、一歩足を踏み出し。
そして、使者に命じる。



「俺に関わった全ての者の、俺に関する記憶を消せ」



「それは、『誰』の命令ですか?」
「俺の……真実の王『白銀(しろがね)』の命令だ」
「──御意」
「待っ……」

どうか、俺がいなくとも。


「──幸せに」


行きましょう、と促され。
意識を失った仲間を振り向かずに、地球を去った。




☆☆



面白いことになってるじゃねぇか。
銀色がいないとは、俺に主役やれってか?
どいつもこいつも情けねェ。
銀色に輝く不完全体を失いながらも、そのまま動き続けるたぁ、あまりにも不格好じゃねぇか。



「おめぇさんは忘れる痛みも、忘れられる痛みも、全部知ってると思ってたんだがな。──なぁ、兄弟」



金色に輝く男は。
ふらりとかぶき町の通りを歩いた。







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