頂き物《小説》

□雪月花、まるで彼の様
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地球には『雪月花』っていう言葉があるみたい。
なんでも、自然の美しい風物を表す言葉なんだって。
俺にはよくわかんないなぁ。
景色なんてどこも一緒じゃん。
・・・でも、なんでだろ?
この言葉からくるイメージが、何故だか一人の地球人を思い起こさせる。

例えば『花』。
そうだなぁ、彼を花で例えるなら真っ白な一輪の花。
健気にまっすぐ咲いてさぁ・・・茎をこう、ポッキリと折ってやりたくなるよね。
根ごと引っこ抜いてさ、花なんか握りつぶして。
花びらが儚く落ちていく様を思うと、嬲り殺している気分になるだろうね。
けど、なんだかんだそう簡単には枯れそうにないだろうな。
雑草根性っていうの?
あ、雑草はないか。
俺が雑草ごときに興味持つわけないし。
でもこの花は綺麗だろうから、もう少し見ててもいいかなって思うんだよね。

それから『月』。
闇に覆われた世界だと神々しさっていうの?
そういうのさえ感じさせる存在感があるよね。
でもさ、いつも見ているあの「兎が餅突いてる〜」って表現されている表面とは逆に、裏側は絶対見せないんだよね。
宇宙に行けば簡単に見れるけど。
彼にも見せたくない裏側なんてやつがあるのかな。
例えば過去、とかそのもっと以前、とか。
そういうの無理矢理にでも暴きたくなるよね。

そして『雪』。
初めて雪を見たとき大地を覆う白さに珍しく俺は感動したな。
その世界に一歩踏み出すと、俺の歩いた後だけが残るんだ。
するとさ、出来た足跡が泥で汚れるんだよね。
何度も続けて踏むと白い一面があっという間に茶黒くなってさ。
それが面白くって。
なんかさ、白い雪が泥で汚れると、まるで処女を犯すような気分にさせるんだよ。
でも、それよりも楽しくて綺麗に思える瞬間があったんだよね。
雪の中での殺し合い。
血が落ちて、雪に滲むんだよ。
とっても綺麗だと思ったよ。
白が朱に塗り替えられる瞬間。
ぞくぞくする。
白といえば彼の代名詞だよね。
彼の姿からか、あるいは彼の異名からか。
血で汚れた彼、凄く、よかったなぁ。


うん、やっぱりこう考えるとこの言葉はお侍さんにピッタリだ。



【完】

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