頂き物《小説》

□一夜の遭遇
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ザァ・・・・・・ァッ!




暗闇に色塗られた闇夜の地。
その黒い世界の中で、幾重にも反響し聞こえる雨音。
そして、その中に紛れ聞こえる足音。




「クソッ、なんで俺が遠出して町に買出しに行くたびに雨が降んだよ」




悪態をつきながらも足を進める若者は、この時代には珍しい長髪でポニーテールを作った若者。



「それも先輩が俺に何か呪術的な事をやった後に限ってだ・・・・・もしかしてそれか?それが原因か?」





右肩に大きな米俵を三つ抱えたまま左手に傘を持って考え込む。
だが、すぐに首を横に振り辺りを見渡す。







「いや、今はそんな事よりも雨宿りできる所(とこ)探さねぇと・・・・・・・・」






早くこの雨から避難しなければ、買ってきた米が傷んでしまう。
それは、せっかく遠出までして苦労した今日一日の行動を無駄にしてしまう事だ。
それだけはなんとしても避けたい。



それに、もしそうなってしまえば今お世話になっている道場に帰った時に、また先輩になんと言われるか・・・・・・。



想像しただけでもかなり面倒くさい事だ。
そんな事にならない為にも、早く屋根のあるところに避難しなければ。





そこでふと、森の木々に邪魔され隠されていた寺の屋根らしきものが目に止まった。







(・・・・・・こんなところに寺があったのか、不幸中の幸いって奴か?いや、微妙に遣い方が違うな)







一人心の中でボケとツッコミを繰り返しながらも、今は助かったとばかりに急ぎ足でその寺へとその若者は向かう。



その寺に近付けば近付くほど、その若者は自分で自分の目敏(めざと)さに感心した。

寺は森の木々達に囲われ、とても見つかりにくい所に建てられている。
そのうえ、もう随分昔に使われなくなってしまったのだろう。
その寺は、あちらこちらコケに覆われていて、
周りの景色と見事に同化してしまっている。

よくもまぁ、自分はこの寺を見つける事が出来たものだ。





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