夢への道
□膨らむ心
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『悪阻』
それは、個人差はあるが妊娠した者は必ず一度はある現象なのだ。
「うぇぇえぇええええ………」
ソニックが妊娠して5ヶ月。
その背を優しくさするシャドウの顔は心配の色に染まっている。
普通なら、安定期に入っていてもおかしくはない筈なのだが。一向にその兆しが現れない。
「しゃ、しゃど……」
一通り吐いたソニックが、青い顔色をしてシャドウを見る。
「お……オレ、は、だい…じょー、ぶ……」
いつもの笑顔を浮かべいるが、顔色が悪くて大丈夫には見えない。
シャドウの顔にしわが多くなっていく。
「………………君が…………」
「………?」
眉を寄せ、ムッとしたシャドウ。
「君が苦しむくらいなら、子供なんていらない」
苦しむ君を見たくない。言って、さらに眉を寄せる。
まるで、駄々っ子のように見えた。ソニックは笑みを浮かべる。
「なぁ……、シャドウ………」
苦しげな顔から一転、優しい顔に変わる。
「“親になる”って、どういうこか解るか?」
「“親になる”……?」
ソニックの問いに首を傾げる。
「オレは、“親になる”ってのは“強くなる”ってことだと思うだ」
精神的に強くなり、肉体的に強くなる。そして、何より強くなるのは………
「“いきもの”として強くなるじゃないか?」
──“いきもの”として強くなる。──
シャドウは口の中でその言葉を復唱する。そうすると、シャドウの中で何かがストンと収まる。
ソニックはシャドウの手を引き、それを自分の腹の上に乗せる。
そこは、自分と彼の子供が居るばしょ。
「こうやって、“いきもの”の体温を感じ、育み、愛おしみ、大切にする。そうやって、親になっていくんじゃないか?」