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□齢十八
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17才。セブンティーン、っていうと弾けるレモンの香りがしてきそうなのに、
18才、っていうと急にアダルティな感じがしてしまうのはなんでだと思う?
目の前に座る彼氏、虹村形兆に訊いてみたけれど、怪訝そうな顔を一瞬向けただけで、「知るか」ってつっぱね返された。
彼は少し前から、私はもうすぐ、18才。
「ね、形兆はエロ本とか買うの」
私の純粋な問いに、形兆の表情がいつも以上に険しくなる。
こういうコワイ顔をするときは、実は困っているとき。
私はいつも彼を困らせたくて、キレるまでのギリギリのラインを楽しんでいる。
「……いちいち買わねェよ」
「買えるのに?」
「読みたきゃ読めるだろ」
それもそうか。
じゃあ立ち読みとか…?
でも、彼のそんな姿は上手く想像できない。
たまに弟の億泰くんが友達と一緒にオーソンの前でジャンプを読んでるのは見かける。(彼らはまだ、女の人のハダカよりも少年の友情とか努力とか勝利に興奮を覚える年頃なんだろうな)
そもそも、道端に雨で濡れてふやけた古いエロ本が落ちていても全く見向きもしない彼のことだ。
こっそり持ち帰って騒ぐのは小学生くらいのもんだけど。几帳面な彼は落ちてるものをそうそう拾ったりしないけど。
「さっきから何考えてんだ」
ひとりで色々と考えを巡らせている私に勝手な解釈をされていないか、彼なりに不安なんだろう。
探って諌めるような言い方をする。
「形兆は形兆だなあって」
ニコニコと納得した笑みを見せると、形兆は益々不機嫌そうに顔をしかめた。
「言っとくが俺は別に飢えてねェからな」
「うん」
「頻繁にそんなモンの世話にもなってねェ」
「うん」
「……まァでもギズモが18になって色気のひとつでも覚えてくれりゃあ…」
「でもやっぱり私は永遠の17才でいたいかな!」
まだ黒髪の、柔肌が薄く日に焼けた爽やかな少女でいたい。
捨てられたエロ本に胸がうずうずして、思わず周りの視線を意識してしまうような無垢で無知な十代のままで。
うん、と確かめるように頷いて席を立った私の耳には、「………エロ本買うか」と小さく呟いた形兆の声は聞こえなかった。
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やっと書けた形兆兄貴!
やっと私も18才になりました.