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□CHERRY BOMB
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ガシャン、
空のゴミ箱が教室のドアの隅に置かれた音で、2人の目が合う。
「お疲れ様」
「花京院も、おかえり。もうみんな先に帰っちゃったよ」
「うん、知ってる」
そっか、とギズモは前に向き直り黒板の掃除を続ける。
「…そっちはまだ仕事残ってる?」
「あとこれだけ。日誌はもう先生に出してきたし」
黒板の隅には日付とギズモの名前。彼女は今日の日直当番なのであった。
「……うーん………っ、」
「僕に貸して」
手足の先をぐっと伸ばしながら奮闘するギズモに、軽く手をかざして交代を促すと、
「ありがとう」
白く小さな手が離れて黒板消しが花京院に渡った。
筆圧の濃いチョークの字に少し力を込めて滑らせると、キュッキュッ、と乾いた音がする。
「…優しいね、花京院って」
唐突にギズモが発した言葉に、花京院は思わず手を止めて振り返った。
「急にどうしたの」
「口には出してなかったけどいつも思ってるよ。現に今もこうやって私の日直の仕事手伝ってくれてるし」
ね? と上目遣いで見上げる。
元々口角が上がっているせいかもしれないが、こんなに綺麗に微笑む女の子を、花京院は他に知らない。
「自分じゃよくわからないけど…」
「あれ、無自覚?」
でも何かそれ苦労しそう、とギズモが今度は可笑しそうに笑う。
(多分、僕のは優しいっていうのとはちょっと違うと思うんだ)