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□不憫な性春
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「ピンク」
「あ?」
「しかもフリフリ」
「何だよさっきから」
隣を歩くデイダラの訳のわからない単発に顔をしかめると、「ホラ、」と小声で前方を指差された。
その先には、こちらに向かって歩いて来ようとするギズモの姿。
視線を寄越した瞬間、さっきの単語の意味を理解した。
ハァ、と溜め息をつくオレと、すれ違うギリギリまで胸元に遠慮ない視線を送るデイダラを他所に、ギズモはスタスタと歩き去っていく。
「意外にカワイイのしてんじゃねーか。オレ好みだ、うん」
「…………目が腐る」
「オイ」
「な…なに」
別の休み時間、ギズモの席まで行くと、そこは未だにそのままだった。
オレの声がいつもより低い調子なのを感じ取ってか、座ったままのギズモの腰が僅かに引く。
「胸んとこのボタン。取れてんぞ」
「え?!」
指摘してやった瞬間、ギズモは素早く確認した後、グッとシャツを掴み寄せた。
「う、ウソ……いつから…?」
「知らねーよ。普通自分で気づくだろ」
ギズモは相当ショックを受けているようで、頭の中で色々思い返しているようだが、結局は今の今までこの醜態を恥ずかしげもなく晒してきてしまったことに至り、勝手に赤面している。
「不愉快なモン見せつけやがって」
「わ…わざとじゃないし!てか失礼な!」
「いいから早くなんとかしろ」
チッ、と舌打ちをして、安全ピンをギズモの机の上に置いた。
「あ…りがと、」
「…後でそれ貸せ」
「え?」
「次体育だろ。オレサボるから」
「…、縫ってくれるの?!」
「どうせ自分じゃ出来ねーだろうが」
「はい!!」
ンな自信満々に返事すんじゃねー。
オレは苛立つ気持ちをなんとか抑えつつ、替えのシャツボタンがいくつ残っているか考えた。