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□うつくしいひと
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まず、髪を3つの束に分ける。
右端の束を左へ、左端の束を右へ。真ん中の束が下になるように重ねていく。

この手順をただ繰り返していくだけの単純作業。



「……そんな事して楽しいか?」

「うん」



だって桂さんの黒髪はうっとりするくらい綺麗で、長くて真っ直ぐでつやつやさらさらなのだ。
三つ編みしがいがあるってもの。



「俺は暇なんだが…」

「あ、動かないで崩れちゃう」



伸びをしようとした彼を制すると、「…すまん」と姿勢を直してくれた。


ほんと、女顔負けの美髪。
羽織を着る時、中に入った髪を外にファサァァと払い出す仕草なんてまるでCMみたい。

格好いいとか通り越して、不思議な色気を感じる。



「ほら見て桂さん!」

「ん……ほう、上手いな」



先まで編んだ三つ編みを指で留めて、彼の目の前に回り込む。
桂さんは網目を触りながら妙に感心していた。



「いいなあ、私もこんな髪の毛ほしい」

「俺はギズモ殿の髪も十分綺麗だと思うが」

「そんなことないよ。ねえ桂さんはどんなシャンプー使って…」



言いかけて、突然桂さんが私の髪に手をさし入れた。

頭皮を撫でるような指の感触がぞわぞわと駆け抜ける。



「…、くすぐったいよ」

「確かに楽しいかもしれんな」



え? と聞き返す間もなく手は後頭部に移って彼の方へ引き寄せられる。

今度は唇に温かい感触。


気がつくと桂さんの顔が近すぎる位置に、目の前にあって左手は私の顎に添えられていた。



「かかかかっ、桂さ…!!」

「心から好いている者には、いつまででも触れていたいと思うものだ」



びっくりした拍子に指も離してしまって、たわんで解けた三つ編みが彼の肩から流れ落ちる。



あぁ、本当にこの人は綺麗だ。
綺麗過ぎて眩しいくらい。




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まさに貴公子!

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