ロスカラR2 短篇集
□傷ついて、傷つけて、気づいたのは……
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アッシュフォード学園に居る時はいつもイライラというか、ムシャクシャというか、とにかく不機嫌な気持ちになる。黒の騎士団の活動をするため学園を休むのが多い。そのため、学園では病弱な設定を自分に課してた。
確かに何日休んでも、病弱と言うことで何も言われないけど、たまに学園に顔を出せば、周りにはクラスメイト達が群がってくる。心配してくれているのは分かる。その気持ちはありがたい。でも正直、相手をするのは面倒臭い。
体育の授業では思いっきり身体を動かすことは出来ないし、普段の行動も大雑把には出来ない。今もミレイさん達と一緒に中庭で弁当を食べているけど、病弱の設定のせいで、ご飯はそんなに多く食べることも出来ない。本当、病弱という設定にしなければ、何て今更後悔しても遅いわよね。黒の騎士団では純日本製KMFの紅蓮に乗っているというのに。
「カレン?聞いてる?もしかして気分悪い?」
「え?あ、大丈夫です。ちょっと考え事してただけですから。」
いつの間にか思案に没頭して黙りこくっていたみたい。慌てて返事を返す。心配して声を掛けてくれたミレイさんは、「そう?ならいいけど。」と言って微笑んだ。
「それで、彼とはどうなの?」
「彼?えっと、何の話ですか?」
「あ〜、やっぱり話聞いてなかった。」
どうやら私が考えにふけっている間に今日の授業の話から先に進んでいたみたい。シャーリーが頬を膨らませて怒ったようにしている。勿論冗談だと分かっているので、苦笑を浮かべながら謝る。
「ライ君の事ですよ。」
そんな私を見かねたのか、ニーナが助け舟を出してくれた。
ライ。一ヶ月ほど前、このアッシュフォード学園に迷い込んできた記憶喪失者。
身体は細く見えるが、筋肉は無駄なく付いていて運動神経は良く。
また学校で一番頭の良いルルーシュとチェスで勝負すれば、互角の勝負をするぐらい頭の回転も良い。
容姿も中性的でイケメンの部類に入ると思う。特にあの銀色の髪は一際目立つ。
そんな彼の生活を補助すると言う目的で、私は世話係主任に任命された。
初めは任命されたから、一緒に租界を回ったりしていた。そう思っていた。
……いつからだろう。彼を視線で追うようになっていたのは。
彼と一緒にシンジュクゲットーに行った時、テロリストとブリタニア軍の戦闘に巻き込まれて、彼がKMFの無頼を操作してから?生徒会室で、私と彼の事で誂われて、彼が「まんざらでもない。」って言った時?
それとも、もっと以前からだろうか?分からない。彼を見たり、考えてたりすると、なんというかモヤモヤした気持ちが浮かんでくる。この気持が何なのか、未だに分からない。
「こ〜ら、カレン。またボーっとしてる。」
「あ、ごめんなさい。」
「ふふっ、ライの事でも考えていたのかしら?」
「え?ちがっ……」
「はいはい、照れないの。」
見透かされたように考えていたことを言われて、慌てて否定するけど、ミレイさんは悪戯っぽく笑った。
「それで、ライとはどこまでいったの?」
「あ!それ私も気になるな。」
「えっと……私も。」
「どこまでって、私とライはそう言う関係じゃないですし、そもそも私はライのことを好きというわけじゃ……」
パキッ―……
しつこく聞いてくるミレイさん達に少し強めに否定する。それと同時に後ろから枝が折れる音が聞こえて振り返ると、そこには佇むライの姿があった。