優しくない話。
□独占欲。
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人間、涙を流すことはそうそうない、と僕は思うんです。
だからこそ、泣いた時のこと、というものはなかなか忘れられないものだと思います。
「…っ頼むからぁ、っ……!」
植え付けたいんです、きっと。
僕という粒子、存在を。
彼を泣かせる事で。
彼の目の前にはいつも僕しかいない様に。
「……好きだ…から…っ」
鳴きながらも、彼は悦び、僕を渇望します。
僕は、僕の存在を彼へと流し込んでいきます。
「……っあぁ……!」
喘ぎながら彼は、途轍もない快楽を得て、妖艶な表情をするのです。
その度に僕は、彼のすべてを自分のものにしたような気分になるんです。
「………チャンミンっ……」
ほらまた、僕の名前を呼びます。
きっと僕しか見えないんでしょう。
「……チャン、ミン…」
また。
僕は彼の頬に伝う雫を舐め上げてあげます。
彼はそれを拭う余裕すらないみたいですから。
「…………やっ、ぁっ…!」
僕が少し震えるだけで、彼の息遣いは激しくなります。
深く愛する人を自分の手中に収め、掌の上で転がしてゆく。
この事ほど愉しい事があるでしょうか。
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