優しい話。
□日曜日の朝
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「ふぁ〜…あっ、チャミナ…おはようっ」
「おはようございます、ヒョン」
リビングのソファで、まだパジャマ姿のユノが伸びをしている。
それを横目で見ながら、僕はケトルにお湯をいれた。
朝のコーヒーを飲むためである。
お湯はカップ一杯分だけ注いだ。
ユノはコーヒーを飲まない。
彼は牛乳を愛する男である。
ケトルに溜まってゆくお湯を眺めながら、ふと思い出す。
昔はユチョンがコーヒーを飲んでいた。
ジェジュンは、コーヒーに少しのクリープを入れていたと思う。
自分特製のカフェオレを作っていたのは、ジュンスだった気がする。
何度作り方を問うても、彼は
「秘密だよっ!…でも今度作ってあげるからさっ、そんな拗ねた顔しないでよ〜」
と言っていた。
でもそれを飲むことは、
これから先、決してないだろう。
不意にあの頃の自分を思い浮かべてしまい、僕は首を振った。
思い出すと何故だか言いようのない想いが滲み始め、頭の中をつらつらと止めどない恨み言がめぐり出すーーー。
もう終わったはずなのに、未だにこうして思い出してしまう。
そんな自分に、いつも嫌悪を感じていた。
自分は今に満足していないのだろうか、と。
そう、思ってしまう。
満足していると、心から思っているつもりなのに。
ユノヒョンとならやっていけると、ユノヒョンとだけで、やっていきたいと、願っているのにーーー。
ピィーーーーーッ!!!
ケトルが鳴く。
はっとして我にかえった僕は火を止めて、マイカップに沸騰したお湯を注ぐ。
ピッタリ、いつも通りの量だった。
どんなに寝ぼけていても、楽しくて興奮していても、疲れていても、辛くても、悲しくても、コーヒーのお湯の量は寸分違わない。
それは、あの日も同じだった。
彼等が僕達の前からいなくなった時も、僕はコーヒーを飲んだ。
辛くてもこれだけはピッタリだった。
そんな時でさえ、真に動揺しきれない自分が憎くもあり、賞賛すべきでもあったと、後に感じた。
僕は小さく溜息をつく。
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