虹色の日々
□深緑色
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Jside
今日は何をお土産にしよう。
とりあえず、メールはしておこう。
「沙織ちゃん、どうでした?」
「あと少しってとこかな。喘息でまだ酸素つけてるし、熱も出たり引いたりだしな。
それより、寂しがってさ。昨日はなかなか帰れなかったよ。もし、今日、予定がなかったら、晩飯付きで、付き合ってくんね?」
「いいですよ。久しぶりに沙織ちゃんに新作マジックでも披露しますかね。」
沙織から来たメールには、ヨーグルトとスケッチブックがリクエストだった。
「ねぇ、スケッチブックってさ、みんな、同じなのかな。」
「さぁ。大野さんに聞いてみたらどうです?俺、聞いてみようか。」
ニノがリーダーに聞いてくれてる。
ヨーグルトは帰り道でいいか。
晩飯、どうするかな。あそこのをテイクアウトしてもらうか。
「潤くん、沙織ちゃんのスケッチブックですけど、画材屋さんにもいつでもあるものじゃないみたいです。で、大野さんが頼んでおいてくれることになりました。後日になりますけど。」
「ありがとね。」
仕事が終わってから、頼んでおいた店に晩飯を取りに行って、病院の前のコンビニでヨーグルトと飲み物をいくつか買った。
病室に行くと、うがいと手洗いをしてから沙織のそばに行く。
食事が終わったところのようだったけれど、俺達と一緒にヨーグルトを食べていた。
ここ数日でグッと落ちた食欲で、好物のアイスクリームですら半分しか食べられなかったのに、今日は、ヨーグルトをひとつ、ぺろりと食べていた。
寂しがってる沙織を甘やかしたくて、抱っこすると、やっぱり俺の腕の中で、ずっとニコニコ笑ってる。
時々、沙織の白い指が俺の頬や耳、顔を触って遊んでいる。
指先が唇に触れた時、パクッと食べるようにすると、クスクスと声をあげて笑う。
ふと我に返ったように、ニノを見て、ヒラヒラと手を振ったと思ったらいきなりジャンケンをしてる(笑)
どっちか3勝するまで続いて、沙織が小さくガッツポーズをして笑った。
「勝った?」
「うん。私の勝ち(笑)残念だったね、和くん。賞品、あったのに(笑)」
「うそ?!そんなのあったの?早く言ってよ〜。」
「ふふっ。また、今度ね。」
「沙織の気まぐれゲームだね。今回の賞品は何?」
「そうねぇ。5つ集めて、パンの詰め合わせ、でどう?」
「ノッた!頑張る!」
「今日は、3勝だったけど、次からは一日一回、一発勝負だからね?」
ちょっと揺すって、ほっぺをつつく。
「俺は?」
「潤くんは、15個で交換ね。」
「三倍?!キツイな〜。」
「潤くんはチャンスが多いから、三倍でちょうどいいのよ。」
「詰め合わせのパンは?」
「何にしようかな。」
「メロンパン!メロンパンは入れてよ。」
「あー、いいね。コーンパン、食べたい。そうだ!俺のコーンマヨパンとクルミチーズ!忘れてた!」
「あー、ごめんね。退院してからね。」
「なに、そのおいしそうなセレクトは!潤くん、ズルいって。」
「この前のジャムパンとメロンパン、潤くんは食べられなかったからね。その時の分ね。」
「クルミチーズパン、食べてみたいな。」
「翔くん、好きそうだよな。」
「だね。絶対、ノッてきそう。」
「そのうち、広まるんだろうけど、積極的に広めないでね?どうしたって、7月過ぎなきゃ作れないし、退院しても、すぐには作れないと思うから。」
「ジャンケンしてたらわかるでしょうよ。」
「言わなきゃ、ただジャンケンしてるだけ、でしょ?」
「一番に気づくのは、大野さんでしょうね。」
「多分ね。」
「メロンパン、コーンパン、クルミチーズ、と後ふたつね。お楽しみに。」