虹色の日々
□たんぽぽ色
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キッチンで作業しながらチラッと見ると、リビングのソファで、嵐の5分の3が寛いでる。
オフの嵐さん達は、やっぱり普通の男の子で。
私がチラチラと見てると、誰かしらと目が合う。
なんだかうれしくて、その度にニコニコしてしまう。
潤くんからは、ニコニコ笑ってからウインクや投げキスが飛んで来る。
和くんからは、ニギニギピースとアイドルスマイルが飛んで来る。
智くんからは、ふにゃっとした笑顔が返ってくる。
笑顔が返ってくる度に、楽しくて作業も進む。
潤くんのスマホが鳴って、お迎えの知らせ。
潤くん達が玄関に向かう中、急いで荷物を作る。
「潤くん、これ、休憩に食べて。皆の分、あるから。いつもより味は濃くしてあるから、大丈夫だと思うんだけど。」
「ありがと。何してるのかと思ったら、これだったんだね。」
「楽しみだなぁ。ありがとね。」
「翔ちゃんと相葉さんに食べさせるのはもったいないな。あっという間になくなりそうじゃない?」
「大丈夫だよ、和くん。ちゃんと分けてあるから。ケンカしないで食べてね。」
「ありがとね、沙織ちゃん。」
潤くんを送り出す時と同じ様に声をかける。
「智くん、和くん、潤くん。今日も一日、元気に、いってらっしゃい!」
「「「いってきます!」」」
潤くん達を送り出して、大きく息をはいて、背筋を伸ばす。
「さぁて、片づけますか!」
家中の窓を開けて、掃除を始める。
三人も泊まって、洗濯物もたくさんあるから、ベランダがあっという間にシーツだらけ。
風にユラユラ揺れるシーツが気持ちよくて、写真を撮ってメールにつける。
お昼のおかゆもつけたら、潤くんからのメールは心配そう。
やっぱりバレてるか。
潤くん達を送り出して、お母さんとの約束の電話をかけてたら、自分の疲れを自覚した。
家事はひと休みして、買い物を兼ねて、公園にいく。
朝はまだなんともなかったのに、昼過ぎに行ったら、ハラハラと花が散り始めている。
風が吹く度に、雨が降るように、花びらが落ちてくる。
藤棚から少し離れたところから、その様子を見て、絵を描く。
「お上手ですね。」
不意に横から声がして、顔を上げると、昨日も公園にいた若いお母さん。
「いえ、大した事は…」
「いきなりお邪魔してしまってごめんなさい。昨日から気になってて。」
「あ、私…目立ちますよね(笑)人目は感じてます。」
「足がお悪いんですか?」
「いいえ。足は大丈夫なんですけど、ここ…。心臓がちょっと…」
「不躾なことばかりで…。あの、昨日から気になってたんですけど、それ、素敵なアクセサリーですね。バッグも可愛いし。」
「ありがとうございます。」
「もし良かったら、どこで買われたのか、教えてくださいませんか?」
「あ、これは自分で作ったんです。」
「そうなんですか!すごいです!」
「いいえ。そんな…」
「クラフトマーケットに出したら、すぐに売れそうですよ。
私の友達は、子供服とか作って出してるんですけど。」
「ステキですね。あなたは、何か作られるんですか?」
「私は全然ダメです!子供の幼稚園グッズを作るのもいっぱいいっぱいで(笑)」
「でも、お母さんの手作りは、娘さんには一番なんでしょうね。
私のは、本当に自己満足ですから。」
なかなか話が終われなくて、どうしようかと思っていたら、スマホが鳴った。
見れば潤くんからの着信で、すみません、と断って画面をタップする。
「もしもし?」
『今、どこ?』
「公園よ。」
『もう随分経つだろ。そろそろ戻って休めよ?』
「わかった。すぐに戻るね。心配かけてごめんね。」
『夜、顔を見に行くから。』
「うん。待ってる。」
『寝てろよ?』
「うん。わかった。じゃあね。お仕事、頑張ってね。」
スマホを切って、スケッチブックもしまう。
「ごめんなさい。家族が心配してて。もう帰らないと。」
「こちらこそ、お邪魔してしまってごめんなさい。」
「失礼します。」
車椅子のスティックを動かして、公園を出る。
藤の花も散ったし、話しかけられるようになってしまったから、あの公園にはもう行けないな。
お野菜買って帰ろう。
昨日の八百屋さんに向かう。
今日も美味しそうな野菜がいっぱい。
またおじさんが出てきてくれた。
「いらっしゃい。トマトはどうだった?」
「すごく美味しかったです。友達は丸かじりしたくなったみたいで、みんなでかぶりついてました(笑)」
「それはよかった。農家さんも喜ぶよ。」
おじさんのおすすめのじゃがいもとイチゴを買って帰る。
家に帰って、さっそくイチゴを加工する。
たっぷりできたイチゴシロップは冷蔵庫に、いちごのコンポートを煮沸した瓶に詰めて棚にしまった。
お日様をしっかり浴びたシーツにアイロンをかけて、きれいになった部屋で、のんびりと夜を過ごした。