虹色の日々
□若草色
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Nside
緊急入院した沙織ちゃんが、パニックを起こして、ICUに入った。
本当に急なことで、潤くんも結構動揺しているみたいで、周りが見えてない。
とりあえず、仕事に行く為に、タクシーに乗った。
「ねぇ、潤くん。沙織ちゃんち、散らかしっぱなしだからさ、仕事終わったら一緒に片づけよう。」
「明日の仕事は大丈夫なの?」
「潤くん、明日も一緒の仕事でしょ?もー、しっかりしてくださいよ。
午後だから、大丈夫でしょ。冷蔵庫の中も片付けないと。あれだけ腐らせたら、冷蔵庫、大変なことになりますよ。」
「想像したくないな(笑)」
「ね、そうしましょう。帰りに俺んちに寄って、着替えを持ってくるから、潤くんちに泊めてくださいね。」
「いいよ。じゃ、頑張って早く終わらせよう。」
テレビ局に入ると、もう翔さんが来ていた。
「おはよ。珍しいね。二人が一緒なんて。」
「翔さんはいつも通りですね。」
「松潤?どうした?元気ないね。調子よくないの?」
「そんなことないよ。朝からちょっといろいろあってね。」
「協力できることあったら、言えよ?」
「ありがと。」
楽屋では、できるだけ、いつものように過ごそうと、ゲームを始める。
潤くんも、そう思ってるのか、本を読み始める。
大きな音をたてて、ドアが開いて、相葉さんが入ってきた。
「おっはよ〜。」
「相変わらず朝っぱらからうるさいっ」
「まぁまぁ、そういうなよ」
「大野さん、いつからいたんですか。」
「相葉ちゃんと一緒にきたよ。」
「そうですか。おはようございます。」
「ニノ?なんか疲れてるね。」
「そうですか?おかしいな。昨日はおいしいツマミで、おいしいお酒を飲みましたし、朝もおいしい朝ご飯をしっかり食べたから、元気ですよ。ねぇ、潤くん。」
急に振ったから、リアクションがおかしい潤くん。
そんなことじゃ、突っ込まれますよ(笑)
「そうだね。また、行こうね。」
「俺も俺も!松潤行くとこって、絶対おいしいもん。俺も行くから。ね?」
ほら、ヘンなのが釣れちゃいましたよ。
「あ、いや…その、今度、聞いとくから。いいって言ったらね。」
「つぎ、いつ行くの?今日は行かないの?」
「今日は家の中、片付けないと。散らかってるからさ。」
「ふう〜ん、わかった。じゃ、今度ね。」
やっと相葉さんから逃げれたと思ってる潤くん。
甘い!
大野さんと翔ちゃんがさっきからずっと潤くんをみてますよ。
あれはもう、気づいてるのかなぁ。
「ニノ?こっち、おいで。」
ほら、ヘンな流れ弾がこっちにきたじゃない。
仕方ないから言う通りにしましょう。
大野さんのそばに座ると、ゴロンと転がって、俺の足を枕に寝ようとしている。チラッと俺を見て、小さな声でつぶやく。
「…ニノ?隠し事は良くないよ?」
「なんのことだか。」
とぼけてみたけど、無駄かなぁ。
潤くんを見ると、潤くんにしては珍しく、寝転んでる。
寝たフリなのか、本当に調子悪いのか微妙な所。
緊張が続いたから、疲れてるのかな。
「俺、先にメイク行くわ。」
一足先に楽屋を出た潤くんの変化は、結局皆、気づいてるようで。
「…松潤、なんかあった?」
昔、潤くんの兄のようだった翔ちゃんは、なんの躊躇いもなく、俺に直球を投げてきた。
「ちょっと、身内にいろいろあったみたいです。」
「え、ここにいて大丈夫なの?」
「仕事、休むのをすごく嫌がる人なんで。だから潤くんは頑張ってるんです。」
「そっか。そりゃ、頑張って仕事、おわらせないとね。」
「ですね。」
「で?昨日は何食べたの?」
「生ハムのオードブルと、牛肉の赤ワイン煮込み。」
「すげー美味しそう。で、朝は?」
「ポトフと、チーズオムレツとサラダ。」
「ニノが朝からそんなに食べるなんて、珍しい!」
「あんまりいい匂いで(笑)」
「あー、やっぱり、食べたい!」
「残念でしたね。」
うまくかわしたつもりでいたんですけどね。
「そっか。松潤んち、そんなにうまいもの、あるんだ。」
俺の足を枕にした男が、ぼそっと小さな声で呟いた。
ギクッとしてチラッと、ホントに、チラッと見ただけなのに、目が合った。
こっそり口元に一本指を当てると、んふふ…って笑って、いいよって呟いて、目を閉じた。