Novel

□星とチョコレイト
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いつもの如く、窓から浸入しようとしてやめる。その理由は簡単なもので、窓の向こうにいるルーシィがいつもと違って見えたからだった。


L、O、V、E。

机の上にアルファベットの文字が入ったチョコレートを並べて、うっとりとそれを眺めている。そのルーシィの姿はなんと言うか今まで見たことのないくらい可愛い顔をしていて、思わず胸がどきんと音を響かせた。

頬をほんのりと染めたルーシィはゆっくりと口を動かした。そこから発せられた言葉はナツという、確かにオレの名前だった。



そんな顔で呼ばれたら。

窓越しでもしっかりと聞こえたオレを呼ぶルーシィの声に胸がきゅう、と苦しくなって一気に顔が赤く染まる。ちらり、隣で翼を広げ飛ぶハッピーを見ると、楽しそうに口を押さえて笑っていた。

「うっせえ」
まだ何も告げていないがハッピーが何を言いたいのかが手に取るように分かる。きっと冷やかしているのだ、ルーシィがすきなオレのことを。

ハッピーの冷やかしと、熱くなる思いに堪えられず、オレは窓を開けた。

「ん?チョコじゃねえか」
なるべく普通の、いつものオレを装いルーシィに声を掛ける。少しでも気を抜けば、ルーシィへの思いが全て漏れてしまいそうだ。

ひょっこりと姿を現してみれば、ルーシィががたんと音を立てて立ち上がるものだから、オレも何だと目を丸くした。と同時にチョコレートが机からばらばらと落ち、つい目線を送ってしまう。LOVEと並んでいたチョコレートは散らばり、ルーシィの手によって拾われた。

「い、いいつからいたの!?」
「最初から」
チョコレートを並べ、眺めていたのを見られたのが恥ずかしかったらしい、ルーシィはチョコレートを机の上に置いてから椅子に座り、赤くなった顔を隠すようにうつ伏せた。

「……」
少しだけルーシィの気持ちが理解出来たような気がして、また顔が熱を帯びていく。

もしかしたら。

考えてから、やっぱり違うだろうと心を落ち着かせる。

あるわけがないのだ。
ルーシィがオレのことを好きだなんて。
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