Novel

□はっぴーはろうぃん!
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今日はハロウィン。早朝からマスターは酒を煽るように飲み、ギルドのみんなはそれぞれが持ち寄ったお菓子を交換しあったりしていた。

「ルーちゃんルーちゃん」
呼び掛けられ、ルーシィは振り返った。振り返るとレビィが笑顔で綺麗に包装紙でくるまれたお菓子を差し出しているのが見えた。

「ええ?いいの?」
ありがとう、と差し出されたお菓子を受けとり、ルーシィはすかさず昨日徹夜で作ったクッキーを、味は保証しないから、と付け加えて渡した。同時に、レビィにありがとうと言われ、ルーシィもにっこりと微笑んだ。

今日はハロウィン。お祭りなどイベント行事が好きなこのギルドでは当然のごとく朝から歌って騒いでの大盛り上がりだった。



そういえば、ナツはどこにいるのだろう。
ルーシィは周りを見渡し、お目当ての人物を探した。そして、さくら色の髪を見つけてつい微笑んでしまう。すると横から行ってきなよ、と茶化すようにレビィに言われ、ルーシィは頬を染めた。

どうやらレビィには、ナツがすきだということがばれているらしい。
ルーシィは弱々しく、うん、とだけ頷き、昨日作ったクッキーを持ってナツのもとへと行った。

すでにいくつかお菓子を貰ったらしいナツは、口いっぱいにお菓子をほうばっていた。
「ナツ!」
声をかけてみれば、ナツはお菓子をほうばったまま、もごもごとルーシィ、と返してきた。
「お菓子をくれなきゃいたずらするぞ!なんてねっ!はい、ハッピーハロウィン!」
さっそくお菓子を渡すとナツはまだお菓子をほうばったまま、ありがとな、と返事をした。それが嬉しくてつい顔が綻んでしまう。


お祭り騒ぎが終わったギルド内は静かになる。静かになるといっても、いつも通り騒がしいのだが、お祭り騒ぎの時よりかは静かに聞こえるのだ。

「はあ、疲れたーっ」
腕をぐん、と上にあげルーシィは背伸びをした。昨日徹夜をしたこともあり今日はもうくたくただ。

「じゃあ、またね」
そう言葉を残し、ルーシィはギルドをあとにした。


家につくと、着替えもろくにしないままルーシィはベッドに横たわった。

ナツにお菓子を渡せて良かったなあ。
ぼう、と今日の出来事を思いだし、ルーシィはついにやけてしまった。

「何、にやにやしてんだよルーシィ」
「ルーシィ、きもちわるいよ?ぐふふ」
突然、視界を埋めたさくら色の髪の少年と青い猫をみてルーシィは飛び起きた。
「な、なんであんたらがここにいんのよっ!」
と言ってもこれが日常茶飯事のことなので、ルーシィはそれ以上はもう何も言わずに枕に顔を埋めた。

恥ずかしい。よりによって、ナツのことを考えてにやけてしまった顔を当の本人に見られてしまうなんて。

「なあ、ルーシィ」
呼び掛けられて、ルーシィは時間をおいてから、何よ、と問いかけた。
「オレ、お前にお菓子あげてねえんだけど」
言われて気付く。言われてみればお菓子をあげただけで、貰ってはいない。

「いいわよ、あたし別にそういうの」
顔をあげてナツを見ると、まっすぐ見つめてくるナツがいてルーシィは恥ずかしくなりまた顔を枕に埋めた。
「なあ、オレ、お前にお菓子あげてねえんだけど」
「もう、いいわよ、そういう――」
「だからよお、いたずらしていいか?」
「はあ!?」

ナツのまさかの言葉にルーシィは顔をあげ、飛び起きた。
「ななな何言ってんの!?」
赤くなる顔を隠すように手を添えてルーシィはナツを見た。ナツは変わらずに真剣な目をしていて、まっすぐとルーシィを見つめていた。

「なあ、」
ナツがつめ寄ってきて、たまらず後ろへあとずされば、またナツがつめ寄ってきて逃げ場がなくなる。
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