短編

□天使絶唱シンフォギア EPISODE1「響かぬ歌」
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「…………あ、う……」


ここは南米、バルベルデ共和国。
この国のとある廃街に、幾人もの少年少女達が捕虜として捕らえられていた。そのほとんどは、この内戦で両親を無くした子供達。

時刻も夜となり、恐怖だけが支配していた昼間との違いから来る安心感から、子供達の何人かは辺りの兵士達に聞こえないように、けれども口々に両親を呼ぶ。「お父さん、お母さん」と。
その子供達の一人、雪音クリスは、父母の名を呼ぶ事も、恐怖する事もなく、ただ小さく、一言だけ呟いた。己の切実なる願いを。


「…………助けて…………」


そう、そうただ一言呟いた────その時。


ボンッ!
「!??」

「な、何だ!?何が起きたっ!?」

「そ、それが急にたて──もぐっ!」

「うわぁぁ!!に、逃げろぉ!」


急激に聞こえた爆発音と、逃げ惑う兵士達の叫声。子供達には、全く訳が分からなかった。
敵が襲ってきたのかと思い泣き叫ぶ子もいれば、誰かが命を掛けて助けに来てくれたのかと嬉しがる子もいる。クリスはただただ、驚くばかり。
───だが、その驚きはすぐに別の出来事によって、より強い驚愕に打ち消された。

カンッ───と金属のぶつかる音が聞こえ瞬間、子供達を閉じこめていた建物の扉が数多の方向に切り裂かれた後を作り上げ、少ししてからバラバラと崩れる。
その向こうに立っていたのは────


蒼と白の鎧を纏い、顔も鉄の仮面をした
『人間の様なもの』
だった


「は……………?」


驚きの余り、泣き叫んでいた子も、喜んでいた子も、全員が動きを止め、声を止めた。
そんな子供達を見て、鎧を纏った何かは、どこからか剣を取り出し、縦に振るう。
すると、建物自体が真っ二つとなり、左右に倒れた。


「…………ここから、逃げろ」


機械を通した男と思われる声がする。
けど、子供達は当然そんな事は気にも止めず、一目散に逃げ出した。
ただこの時、クリスは感じていた。この鎧を纏った者の〔声〕が──悲しみに満ちていたと。





この三日後である十二月二十八日、国連が内戦の停止のために軍を派遣。停戦にこぎ着け捕虜となっていた子供達も保護された。
そしてこの頃から、ある噂がゆっくりと世界中に流れる。

鎧の天使の噂が───






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EPISODE1「響かぬ歌」
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