喰えない子

□悪夢再来
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私、朝倉華は今、日本支部で働く祓魔師たちから集めた任務報告書を提出するべく、理事長室に向うところである。

束になった書類を胸に抱え、気持ち小走りで正十字学園内の中庭を抜ける。
特に急く用件ではないのだが、朝から何かとトラブルに見回れていたせいか、自然と急ぎ足になっていた。


「にゃーん」

「あれ、クロー!どうしたの?」


途中、今は塾生・奥村燐の使い魔である猫又のクロと出会った。
喉をならしながら足元にすり寄ってくるその愛らしさに、思わず足を止めてしまう。
ちなみに私は無類の動物好きである。


「カーワーイーイーなーーもうっ☆」

「うなーん」


しゃがみこみ頭を撫でてやると、クロは私の膝に無理矢理座よじ登ってきた。
ああ、可愛い〜…


ガササッ

「!」


後方にある花壇から不穏な音がした。
音に反応したクロは急に血相を変え、膝から抜け出し、あっという間に走り去ってしまった。

近付いてくる音、同時に何かの気配を感じる。
これはもしかして…!


「…きゃッ!」

「グルルルァ!!」


予感は的中、花壇の木陰から数匹の鬼族の悪魔が飛び出してきた。

間一髪のところで襲撃を避けることはできたが、目の前に現れた悪魔は大小合わせて5匹。
しかもあとから数匹が追ってきているようだった。

普通、祓魔師は二人以上の小隊を組み戦う。
だが今、近くに人はいない。
さらに普段事務要員である私は武器になるものを携帯していなかった。

完全孤立の丸腰状態で、この数はあまりにも部が悪い。
危機的状況であるのは明確だった。

嫌な汗がでる。
だがそんな私のことなどお構いなしに、鬼族たちは臨戦態勢に入っていた。


「やるしかないってこと…かなッ」


次の瞬間、再び飛び付いてきた悪魔を素手でなぎはらう。
しかし数の多い小鬼が、腕に足にまとわりついてきた。
それも何とか振り払い、その場から走り出す。
下手に応戦するより、安全な場所へ逃げるのが賢明だと判断をした。

逃げる途中、少しだけ背後に視線をやると、そこには当然のように追いかけてくる小鬼たち。
何となく解ってはいたのだが、奴らは目にハートを浮かべていた。


「あーもうッ!なんなのよー!!!」


文句をいうより逃げるが先。
目指す先はもう決まっていた。
こんな状況でも書類は手放さない私は、つくづく仕事人間だと思った。
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