企画
□幼少化
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「はぁ…全く。」
「はぁぁぁぁぁ。ほんっと可愛いわ、この子…」
名前、メフィストは揃いも揃って深いため息をついた。
その表情はというと、メフィストは呆れ顔、名前はにやけ顔と見事なまでに対象的。
二人のため息の原因は…名前の膝の上に居座る少年だ。
「そのまっすぐな眼差しとか…もう何この可愛さマジ天使。」
「悪魔ですよ、それ。」
緑の頭に生えたツノ、尖った耳に濃い隈のできたたれ目。
体こそ小学生ほどの大きさにはなっているが、その少年はアマイモンそのものだった。
メフィストからこうなった理由を事細かく説明された名前だったが、その内容は半分も理解できていなかった。
そんなことより目の前にいる幼くなった義弟を猫かわいがりしたくてたまらなかった。
「さっきも説明した通り、魔力が急低下して不安定な状態になっているんです。あくまで中身は普段のアマイモンと変わりないんですから…
ちょっと、頬刷りするのはやめなさい。」
「わかったわかったー。いやしかし、このサイズだと本当に弟ができたみたい。ねー、アマイモン♪」
「…姉上ですか?」
「いっ、いい!それいいね!もう一回呼んで!!」
「姉上?」
「はう…!!!」
上目がちにそんなことを言われた日にゃ、もう犯罪犯したって仕方がないよね。まず可愛さが犯罪級だもの。
今なら彼の妹萌の精神がわかる気がするわ…
そんなことを考える名前。
完全に幼少アマイモンにはまっていた。
あざといのか天然なのかは置いといて、アマイモンの行動はいちいち名前のツボをとらえてくる。
つまらなさそうにあくびをする姿さえ可愛く思えた。
一方のメフィストの目には、そんな愚弟の行動は狙ってやっているようにしか思えなかった。
第一、名前の膝上を独占しているのも気に食わない。
「おいお前、あまり調子に乗るなよ。」
「何のことでしょうか、兄上。」
「ほう…私の前でしらを切るつもりか。いい度胸だな」
「メッフィーうるさい。」
「なっ!?」
兄の怒りは、名前の「うるさい」のひとことで一蹴された。
何たることか、兄の威厳も何もありはしない。
「アマイモン、怒りんぼの兄上はほっといて、姉上とあそぼっか☆」
「わーい!」
アマイモンが小さくなろうがどうなろうが、メフィストの"シナリオ"には何ら影響はないはずだった。
それがこんな思いもよらないところで、これほどまでに面白くない結果になるとは。
メフィストは床に座り込みお絵かきをし始めた二人を横目で眺めた。
「…つまらん。」
しかしこれが始まりに過ぎないということは、さすがのメフィストも知る由もなかった。