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□横顔
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俺は、良く縁下の横顔を見る。
練習試合で応援するときは隣にいるし、試合でも俺のトスを打ってる姿っていうのは俺から見たら横だから、他の人よりも縁下の横顔は見てると思う。


はっきり言うと、縁下の横顔は凄く綺麗だと思う。
まぁ、付き合ってるからっていうのもあるかもしれないけど、でも本当に綺麗だと思う。
それに、縁下の目には真っ直ぐな意思と闘志がある。
1度逃げ出した過去を持っている縁下だからこそだと俺は思う。


今日の練習試合でも、知らない間に縁下を見てたらしい。
いや、集中してなかったわけじゃなくてたまたま。
何回か縁下と目があった。
目が合うたびに、縁下は照れ臭そうに目線を逸らす。


────あぁ、これは後で縁下に何か言われるな。



その日のメニューが全て終わり、各自が帰る準備に取り掛かっていた。

結局あの後、また何度か目が合ったし、そのたびに縁下は照れ臭そうに目線を逸らした。
俺らも試合に出たけど、やっぱり縁下を見てた。
先生には何も言われなかったから良かったけど、大地には注意された。



「ちーからっ、帰るべー」
「あ、はい、行きましょうか」


いつも途中まで一緒に帰っている。
2人だけの時は名前呼び。
いつも部活で一緒だけど、こうして2人っきりになる時が1番好きだ。
暫くは無言で歩いてたけど、縁下の方から喋りかけて来た。


「あ、あの!孝支さん…ちょっと聞きたいことが…」


ちょっと照れながらそんな事言ってくる縁下が可愛くて仕方がない。
聞かれることは多分、あれしかないだろう。


「どうしたの?」
「今日、応援してる時とか、俺の事見てましたよね…?」


やっぱり。
言われると思ったよ。


「うん、見てたね。無意識のうちに力の事見てた。俺、力の横顔好きなんだ。だから、見惚れてた。」
「え、あ……は、恥ずかしい…です……!」


顔を真っ赤にして俯いちゃう。
まぁ、俺から見たら横顔なんだけどね。
真っ赤に染まった顔を俯かせてる横顔なんて、綺麗すぎる。


「…孝支さんだけ、ずるいです。俺だって」
「俺だって?」



「孝支さんの横顔、好きですから。」



そう言って更に顔を真っ赤にして、手で顔を隠すように覆った。

なんて可愛いことを言ってくれるんだ。
今すぐにでも抱きつきたい。
でも、今は外で人通りも少ないわけでは無い。



「あー、力がそんな可愛い事言うから抱き締めたくなったじゃん。人気の少ないとこ早く行くべ。」
「!?こ、孝支さん?」



縁下の腕を引いて人気の少ない路地に連れてきた。
ここなら誰にも見られないだろう。


「孝支さん?」
「、力────」



ギュッ、というよりも、ふわっ、という音の方がしっくりくるかもしれない。
縁下を自分の腕の中にすっぽりと収める。
俺の方が若干身長は低いけど、関係ない。
この腕の中の可愛い恋人があんな事言うから悪いんだ。



「ちから、キス、しようか」
「!?」
「だめ?」
「…こうし、さん…卑怯だ…」



重なる影と影は、美しい横顔をうつしていた。






(君以外の人の横顔なんて)(綺麗だとか思わないよ)(だって、君は────)



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