虚圏*破面
□春梅
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強く思うほど心は灰になってゆく
こんなに愛して
こんなに揺れて
こんなに見失い
こんなに求めた
影は段々と遠くなって私を一人にした
No1
『bond』
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―綺麗な快晴だった。
小鳥が平和そうに空を奏でていた。
「ついに僕が当主になる日がきたよ」
髪を高い位置に一つに束ねて結び
祝い用の飾りを装着した。
「あの子はどう思うだろうか」
腰ひもをキュッと結び
袴を履く。
鏡に映っている己の姿を儚げに見つめて
深呼吸をして瞳を閉じた。
「凛」
ドクンー。
心臓がひっくり返ったかと思った。
ゆっくりその声の方へ振り返った。
「楝…。
起きてて、平気なのか…?」
たどたどしく様子を伺った。
「?
だって今日は素敵な日でしょう」
「…ああ。
体に問題が無ければ、良いのだ」
凛が見つめた先にあった
斬魄刀がキーンと共鳴した。
我ながら実の妹なのに
会話するだけでこんなに
緊迫するとは思わなかった。
ギリッと握り拳に力が入った。
その反面楝は
天使の様に微笑んだ。
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ー僕が″当主″として
四代貴族の一角のトップになる。
迷いのない道しるべさえあれば良い
そう決めた。
でも僕は既に最大の過ちを犯していた。
イヤ、知っていたにも関わらず
目を瞑っていたのかもしれない―。
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