虚圏*破面

□春梅
1ページ/21ページ







強く思うほど心は灰になってゆく


こんなに愛して
こんなに揺れて
こんなに見失い
こんなに求めた


影は段々と遠くなって私を一人にした







No1
『bond』




*****





―綺麗な快晴だった。
小鳥が平和そうに空を奏でていた。



「ついに僕が当主になる日がきたよ」



髪を高い位置に一つに束ねて結び
祝い用の飾りを装着した。



「あの子はどう思うだろうか」



腰ひもをキュッと結び
袴を履く。




鏡に映っている己の姿を儚げに見つめて
深呼吸をして瞳を閉じた。



「凛」


ドクンー。
心臓がひっくり返ったかと思った。


ゆっくりその声の方へ振り返った。


「楝…。

起きてて、平気なのか…?」


たどたどしく様子を伺った。


「?
だって今日は素敵な日でしょう」


「…ああ。

体に問題が無ければ、良いのだ」


凛が見つめた先にあった
斬魄刀がキーンと共鳴した。


我ながら実の妹なのに
会話するだけでこんなに
緊迫するとは思わなかった。


ギリッと握り拳に力が入った。



その反面楝は
天使の様に微笑んだ。







******






ー僕が″当主″として
四代貴族の一角のトップになる。


迷いのない道しるべさえあれば良い
そう決めた。



でも僕は既に最大の過ちを犯していた。




イヤ、知っていたにも関わらず
目を瞑っていたのかもしれない―。










-
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ